アルコールをとりまく産業保健 : 職業におけるアルコール関連問題対策の現状と課題
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概要
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職場におけるアルコール関連問題対策は、(1)問題飲酒者の職場再適応に対する支援、(2)問題飲酒事例の早期発見・早期介入、(3)問題飲酒事例発生の抑止に集約される。(1)は断酒への支援、併存する精神医学的病態(うつ状態など)への理解とそれを踏まえた業務上の配慮が重要である。(2)が有効であることは、過去の知見によって裏付けられている。intensive careが必要な例を治療に導入する手順は確立されてきたが、今後はbrief interventionなどを取り入れた、病態の重篤度や問題の大きさに応じた多段階の介入システムの洗練化が望まれる。(3)については、職場の飲酒風土の変革が大きな課題としてある。職業性ストレス対策は、(3)としては意義深いが、(2)の個別介入の方法として行う場合には、enablingに注意する必要があろう。これらは、「事業場における労働者の心の健康づくりのための指針」(平成12年8月公示)に沿った活動の中でも展開できる。アルコール関連問題に対する産業保健スタッフの取り組みは、(1)生活習慣病保健指導型(専ら健康診断結果に基づいた保健指導に終始する)(2)アルコール性健康障害保健指導型(アルコール性健康障害全般に関して保健指導を実施する)(3)アルコール関連問題介入型((2)に限らず、職場で発生したアルコール関連問題に広く介入できる)(4)アルコール関連問題予防型((3)に加え、アルコール関連問題の一次予防にも取り組む)に分類することが可能である。(1)(2)は、職場の日々の情報が得られにくい大規模事業所の健康管理部署において、比較的陥りやすい型であると考えられる。(1)→(2)→(3)→(4)と活動の幅を広げるには、アルコール関連問題に関する知識や介入技法だけでなく、関連部署との連携、幅広い職場情報の収集、従業員からの信頼、職場に密着した活動などが必要である。これらは、とりもなおさず、ほとんど全ての産業保健活動の実効性を高めるための必須要素である。
- 産業医科大学学会の論文
- 2002-03-01
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