I型糖尿病の発症機構に関する研究 : NODマウス糖尿病発症におけるMHCクラスI拘束性CD8陽性Tリンパ球の関与
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概要
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ヒトI型糖尿病のモデル動物であるnonobesediabetic(NOD)マウス(H-2 K^d,D^b) の発症機構にはTリンパ球が関与していることが報告されているがその詳細な機序はいまだに不明である。我々はNODマウスの糖尿病発症機構におけるMHCクラスI拘束性を有するCD8陽性Tリンパ球の役割を検討するために,サイクロフォスファマイド(CY) を投与した10週齢雄性NODマウス及び無処置5週齢雌性NODマウスにMHCクラスI分子に対する単クローン性抗体を投与し,糖尿病発症抑制効果を観察した。CY投与群の14週齢における糖尿病発症率はコントロール群(37/64,58%),抗K^b抗体投与群(13/22,59%)及び抗D^b抗体投与群(12/27,44%)に比較して,抗K^d:抗体投与群(3/38,8%)及び抗CD8抗体投与群(2/13,15%) では有意に低下していた。また抗K^d及び抗CD8抗体投与群においては膵ラ島炎の程度が他群に比較して軽減しており,酵素抗体法により膵ラ島浸潤Tリンパ球のサブセットを検索した結果,他群ではCD4陽性及びCD8陽性Tリンパ球がほぼ同数存在したのに比較して,CD8陽性Tリンパ球がほとんど認められなかった。さらに無処置群においても30週齢における糖尿病自然発症率はコントロール群(30/46,65%)に比して,抗K^d抗体投与群(O/9,0%)では有意に抑制された。以上の結果より,MHCクラス1K^d拘束性を有するCD8陽性Tリンパ球がNODマウス糖尿病発症に関与していることが示唆された。よって本モデル動物の膵β細胞破壊に細胞傷害性Tリンパ球が重要な役割を果たしている可能性が考えられる。