MRIによる髄液短絡管機能評価の試み
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概要
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水頭症に対する脳室一腹腔短絡術の合併症として短絡管機能不全は稀なものではない。この短絡管機能不全を診断するために種々の短絡管流量測定方法が試みられているが,その正確さ,患者に対する侵襲性,検査方法の特殊性などに問題が残されており,未だ満足できる方法は確立されていない。そこで著者は磁気共鳴画像(Magnetic Resonance Imaging:以下MRI) における流れの特異な性質を説明する"time of flight effect" の理論を応用して通常のMR画像より短絡管流量を測定する方法を考案した。そもそもMR画像において流体の信号強度は流速に応じて変化するものであるが,この信号強度の変化と流速の関係を説明する理論が"time of flighateffect"である。ファントムによる基礎的研究では,短絡管装置の腹腔管をゼラチンに埋没した"flow phantom" を作成し,生理的食塩水を用いて流量の変化に対する腹腔管内の信号強度の変化をMR画像上で測定した。その結果は"time of flight effect"の理論に良く一致した。臨床的研究では,基礎的研究で得られた信号強度比一流量曲線を用いて短絡管流量の測定が行われた。臨床的に短絡管機能状態が正常と診断された6例において短絡管流量は10-22ml/hrと測定することが可能であった。また他の方法で短絡管閉塞と確認された例においても短絡管流量はOと測定可能であった。以上本法により短絡管流量を無侵襲で,定量的に測定することが可能となった。
- 神戸大学の論文