くも膜下出血後の脳微小循環動態の変化
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概要
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くも膜下出血(SAH)後の血液流体学因子の変化および疑固剤の脳微小循環に及ぼす影響をラットのSAHモデルを用いて検討した。SAH後,血液流体学因子の変化として血中フィプリノーゲンおよび血液粘稠度の上昇を認め,脳微小循環障害による局所脳血流量の低下と限局性虚血性病変を認めた。次にSAH後Tranexamic acid投与群では,投与量が125mg/kg/day以下では運動麻薄などの脳虚血症状の発現は軽微であり,脳循環障害の程度も非投与群に比Iベて有意差は認めなかった。しかし,200mg/kg/day以上を投与した群では,運動麻痺,脳虚血の程度および局所脳血流量の低下は非投与群のSAH群に比べて有意に高度であった(P<O.O5)。これに対してFactor XIIIの投与群ではTranexamic acid投与群に比較して運動麻痺,脳虚血の程度および局所脳血流量の低下は軽度でありSAH後の再出血を予防する目的ではFactor XIIIがよりすぐれていることが示唆された。以上よりSAH後の虚血症状の発現には,血中フィプリノーゲンの増加,血液粘稠度の上昇による脳微小循環障害が大きく関与していること,またSAH後血液凝固能を変化させる抗線溶剤の投与は,脳微小循環障害を悪化させるため,慎重に投与すべきであると考えられた。