家族性高コリンエステラーゼ血症アイソザイムの生化学的特性に関する研究
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概要
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家族性高コリンエステラーゼ(ChE)血症は主としてC5コリンエステラーゼアイソザイム(C5) の存在に基因すると考えられている。著者はこのC5の生化学的特性について検討した。C5はグラジエントポリアクリルアミドゲル電気泳動で分離し,基質としてbutyrylthiocholineを用いた。健常者におけるC5の発現頻度は1.2%であった。高速ゲル濾過クロマトグラフィーで,C5の分子量はC4と同様約340,000であった。C5は各種レクチンとの反応で,Con A,RCA 60に親和性がみられた。Con Aアフィニティクロマトグラフィーで,C5はC4と同様,0.5M α-methylmannosideで溶出される分画中にみられた。シアル酸除去酵素であるneuraminidaseで処理すると各アイソザイムバンドはすべて陰極側に移動し、C5は他のアイソザイム同様シアル酸を含む糖蛋白であることが示唆された。Proteaseであるtrypsin,bromelinで処理すると,C5は減弱消失しC4の増強とC4の陽極側に新たなバンドを形成し, C5を構成する蛋白成分の一部が分解された結果C4に移行したものと考えられた。脂質分解酵素であるphospholipaseCおよびDで処理するとC5は消失してC4が増強し, C5の構成成分にリン脂質が含まれているものと考えられた。陰イオン交換クロマトグラフィーでC4とC5に等電点の差がみられ,この電荷の違いを利用し,硫安を用いた塩析法でC5のみの分画を採取した。このC5分離液をtrypsin,phospholipase Cで処理するとC5は消失し,C4に移行した。以上より,C5は主活性帯であるC4と蛋白部分が類似した,リン脂質を含む脂質複合糖蛋白酵素と考えた。