高校教育改革と教養の行方 (<特集>教養の解体と再構築)
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概要
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本稿は、(1)高校教育論の中で「教養」なるものがどのように語られ、どのような基本構造を記してきたのか、(2)戦後の高校教育改革は「教養」の解体と再構築にどのような影響を及ぼしてきたのか、(3)現代的状況の中で私たちは<教養>なるものをどのように捉え返していけばよいのか、といった点についての若干の検討を加えることを目的としている。当初の身分的教養は「市民的教養」ではあり得ず、不平等を社会的・文化的に再生産するものでしかなかった。戦後間もない頃、政治的・職業的な内容を含む比較的バランスのとれた「教養」が構想された。しかし、「教養」そのものを実体として語る様式が支配的だったことから、やがて「基礎学力」や「個性」へと矮小化されていく。経済の論理と教育闘志の理論は能力主義的なイデオロギーを伴って、「教養」を個人化していく。高校教育の量的拡大と階層構造の深化にしたがい、都道府県・学校のレベルでも「教養」はますます微細な学力の差異へと変換される。高校教育改革を支配する「欠乏の教育言説」の根底には、<近代的世界観>がる。こうした語りの構造は、トラッキングという装置と共謀しながら、「教養」の断片化を構造的に生成していく。最新の高校教育改革の企ても、この動きに歯止めをかけることはできなかった。こうして、高校生の<関係>のありようは<生>の全体性とは食い違う特徴を帯びるに至っている。私たちは、「教養」の実体論と訣別し、現代社会の織りなすさまざまな環境との<関係>を一人ひとりが再構築する方向で<教養>を捉え直していかなければならない。ここでは、以下の5点を試論的に強調した。 (1) <知>と<生>の全体性を一人ひとりが重視すること(2) 開かれた<教養>のための自己省察を試みること(3) コーディネーターとしての教師という視点で職務と組織の再検討を行うこと(4) 対立と論争ではなく対話とコミュニケーションから<関係>を確立すること(5) (政治的な課題を含めて)外部社会との相互的な<関係>を確立することカオスの時代を生きる中で、私たちは高校教育においていかなる<教養>を構築できるか重要な転換点にさしかかっている。
- 1999-12-30
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