焼き魚の変異原性に対するキャベツ汁分画液の抑制効果
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概要
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キャベツ汁に含まれる焼き魚の変異原性抑制因子を明らかにするため, ブリ肉片を焼き処理(表面温度が260℃になるまで焼く)する前または後にキャベツ汁またはそのゲルろ過分画液に室温で20分間浸漬し, 変異原性抑制効果を調べ, 次の結果を得た。1. ブリ肉片を焼き処理する前に種々の濃度のキャベツ汁に浸漬した場合は, キャベツ汁の農度が高いほど焼き魚の変異原性は低くなった。2. キャベツ汁をSephadex G-100でゲルろ過し, 高分子と低分子画分に2分し, ブリ肉片をこれらの液に浸漬後焼き処理した。その結果, 両画分とも変異原性抑制効果を示した。しかし, その効果は低分子画分の方が強かった。3. キャベツ汁をSephadex G-25でゲルろ過し, 高分子画分(F-I)と低分子画分(溶出順にF-II-1, -2, -3)に4分画し, ブリ肉片をこれらの液に浸漬後焼き処理した。4画分とも変異原性抑制効果を示したが, その効果はF-II-3が最も強く, 次いでF-II-2であった。F-1とF-II-1の抑制効果は弱かった。4. F-II-3とその加熱処理(100℃, 20分間)した試料を用い, ブリ肉片をこれらの液に浸漬する前または後に焼き処理し変異原性を調べた。その結果, 浸漬後に焼き処理した場合には加熱処理した試料でも抑制効果を90%程度保持していたが, 焼き処理後に浸漬した場合には, 加熱処理したF-II-3の抑制効果は認められなかった。対照試験(キャベツ汁の代りに蒸留水を使用)の焼き魚からの抽出液は, 高い変異原性を示した。この抽出液にキャベツ汁の各分画液を加え変異原性抑制効果を比較した。その結果, F-IとF-II-1が強い抑制効果を示したが, F-II-2, F-II-3の効果は弱かった。以上の結果より, キャベツ汁には焼き魚の変異原物質の生成を抑制する作用と生成した変異原物質の変異原性を抑制する作用があることが明らかになった。前者の作用因子はゲルろ過で遅く溶出するF-II-3やF-II-2画分に, 後者の作用因子はゲルろ過で最も速く溶出する高分子画分(F-I)およびそのすぐ後に溶出する低分子画分のF-II-1に主に存在することが示唆された。
- 日本調理科学会の論文
- 1998-08-20
著者
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