坂口安吾「逃げたい心」論
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概要
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初期坂口安吾文学は、後に作者自身も述べているように、常に「孤独」という問題をめぐっている。一番中心的なところでその構造をとらえると、自らの生存の「孤独」の感覚にとらえられた主人公が、それを瞞着する「家族」的な人為を嫌悪し、「自然」に還ろうと旅立つ、その結果「死」へとぎりぎりまで近付くことで生へと転回する力を得る、というものである。ここで取り上げた作品のタイトルにもなっている「逃げたい心」とは、その構造の前半部に相当する、「家族」的なものを嫌悪し、そこから逃走しようとする志向を指している。主人公の蒲原氏は、「家族」的な「温いものの悲しさ」は「やりきれない」といい、そこへは「帰りたくない」という。そしてひたすら「自然」へと還ろうとするのである。この作品において、蒲原氏は結局「自然」に還りきることができないのだが、そのあたりの事情を分析した上で、「逃げたい心」が初期安吾文学において占める位置について考えてみた。
- 福岡国際大学・福岡女子短期大学の論文
- 1999-02-10
福岡国際大学・福岡女子短期大学 | 論文
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