金融・資産市場化・グローバル化への戦略的対応 : 資産ベースの不況対策と資産ベースの福祉政策の提言
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概要
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本稿において次のことを述べる。(1)フローのGDPや国民所得に対するストックの資産の相対的価値が大きくなっていく傾向があること。それにともない資産価値の変動が経済変動や資産・所得の分配に大きな影響を与えること。(2)資産価値変動の国際間格差は経済成長率格差より大きいので、金融・資産についての情報上の優位国は、国際的自由化のもとでは自国の資産価値を高め為替レートを有利にして他国の資産を有利に買うことが可能であること。(3)資産と経済の成長が安定成長軌道を大きく外れた場合、経済安定化のためには、ケインズ的不況対策も単なる新古典派的市場化政策も適切でない。金融・資産型不況には資産政策が必要なこと。スウェーデンは1990年代初頭の深刻な不況に対して資産ベースの。経済政策とも言える不況対策第三の道で不況克服に成功した。(4)このような資産ベースの経済政策に加えて、その補完としても、金融資産の自由化に伴う資産格差の拡大の防除あるいは緩和のためにも、平等主義的資産ベースの福祉政策が必要である。(5)日本はこの数年、経済停滞に悩まされており、今も不況下にあるが、この不況を克服する。ためには次の四つの資産ベースの不況対策をとることによって効果的に不況を脱することができること。すなわち(1)公的資金の金融機関への大量かつ効果的投入。この方式を有効に用いたのは1993年のスウェーデンである。韓国も1990年代に大量の公的資金を金融機関に投入して、金融機能を速やかに回復させて金融危機を克服した。(2)金融資産の間接金融から直接金融への配分(allocation)の誘導。欧米のいくつかの国では1990年代に金融・資産の直接金融へのシフトが生じ、資産市場と経済が活性化した。金融・資産の自由化はこのことを促すはずであるが、この資産シフトをうながす政策が必要な場合がある。(3)経済停滞で資産価値が相対的に低くなった日本では、資産価値が相対的に高くなったアメリカなどの国の資産を自国に誘導し、過度なウインブルドン化を避けながら外資を自国の経済活性化に利用することができる。1980年代の経済活性化とバブル経済は、外資の東京の土地購入から始まった。韓国では巨額の公的資金を金融機関の救済に投入した上に、外資を積極的に活用して経済停滞を脱却した。(4)民間消費の停滞の一つの理由は、破綻がうわさされる社会保障財政の将来に対する不安である。この不安に対処するためにも、資産ベースの福祉政策が必要である。(2),(3)は金融・資産市場化の結果、市場メカニズムによりそのような資産配分の効率化が促されるはずであるが、自動的にそうならない場合、資産ベースの政策的誘導が必要である。
- 2002-11-30