メチルジメトンによる果樹の樹皮処理(塗布)について : 浸透殺虫剤に関する研究 第13報
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
メチルジメトン剤には, メタシストックス(P=O体・P=S体あわせて50%)と改良メタシストックス(P=O体のみ25%)とがあるが, 最近は後者のほうが多く用いられ, 果樹への塗布薬剤もこれが主体となっている。われわれはこの改良メタシストックスの塗布処理について, 効果(薬量)および薬害の両観点から考察した。1.成木では, 主幹より主枝または亜主枝に塗布するほうが経済的であり, その薬量は, (a)枝に投与されるべき絶対量, (b)樹皮単位面積あたりの塗布量(塗布液の厚さ), の2点から論議されるべきである。(a)は防除効果に, (b)は薬害に関係があるが(後者についてはあとで述べる), この中(a)は枝の大きさに応じて加減すべきはいうまでもない。従来, その薬量算出基準には, 枝周・葉数・枝体積などがとられてきたが, 枝周基準の方法は枝の大きさによって効果にむらがある(Fig.2)。われわれは原理的には枝体積によるのが妥当であるとし, その適正薬量を次のように想定した。すなわち, アブラムシ類防除には枝体積1500〜3000cm^3あたり原液1cc, ハダニ類には1500〜2000cm^3あたり1ccが適量であるとした(春〜初夏の場合を標準として)。2.上述した各種の薬量算出法で求められた薬量対枝周の関係を比較考察した(Fig.3)。上に提唱した薬量は, アブラムシ類の場合は, V_1〜V_2の範囲で示される。ハダニ類のそれは, V_1からほぼP_2の範囲がこれに相当する。3.実際問題としては, 枝体積を測定して塗布量を算定するのはめんどうであるから, 次のような方法を提案したい(簡易塗布法)。それは原液の引伸し塗布(樹皮100cm^2に対し原液0.6cc〜0.8cc程度の)を行ない, かつ塗布範囲(塗布面積)は枝直径の3〜4倍長とするものである。これによって与えられる薬量は, Fig.3のP_<1〜3>の範囲と期待される。それは, 上述した適正薬量にほぼ符合する。4.次に(b)(樹皮単位面積あたりの薬量)は, 薬害と関連があり, 特にミカンでは注意すべき事項であるが, これと塗布時気温との組合わせから, 薬害(ミカン)の発生有無がおよそ見当つけられることがわかった。Fig.4のSの範囲では, ミカンでも薬害発生の懸念はほとんどないと考えられる。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1964-03-25
著者
-
野村 健一
千葉大学園芸学部・東京大学薬学部
-
野村 健一
千葉大学園芸学部
-
野村 健一
千葉大園芸
-
野村 健一
千葉大農
-
須藤 昇吾
千葉大学園芸学部
-
清水 武秀
千葉大学園芸学部
-
田代 祐二
千葉大学園芸学部
関連論文
- 浸透殺虫剤の散布による温室内空気汚染について
- II-D.これからの化学農薬(日本応用動物昆虫学会第11回シンポジウム記録)
- 135 果実吸蛾類対策としての電灯照明(昭和38年度日本農学会大会分科会)
- コナガ3系統に対するDDVPおよびBT剤の効果比較
- 530 コナガ3系統に対するDDVPおよびBT剤の効果比較(一般講演)
- 電燈照明による吸蛾類の防除 : 第1報 照明の効果解析とそれに及ぼす各種光条件の影響について
- 253 イチゴを加害するカンザワハダニの生態(第1報)
- 本会創立前後のことども
- 607 エチルチオメトン剤の浸透効果と土性(一般講演)
- 623 モモアカアブラムシのリン剤抵抗性(一般講演)
- 115 メチルジメトンのPO体・PS体の効力比較(昭和35年度日本農学会大会分科会)
- メチルジメトン(メタシストックス)に対する抵抗性ハダニについて(第1報) : 浸透殺虫剤に関する研究 IX
- G. P. Georghiou 教授の講演会
- 1. 序説(シンポジウムII-D これからの化学農薬)
- 序説(害虫防除への新しいアプローチ)
- 序説(2)(害虫防除への新しいアプローチ, 昭和44年度 日本農学会大会分科会)
- 日本の植物防疫, 堀正侃, 石倉秀次編・監修, 1969, 399ページ, 日本植物防疫協会発行, 定価1500円
- 昆虫総目次, 日本昆虫学会編, (1968), 240ページ, 日本昆虫学会発行, 定価会員600円, 会員外800円(送料とも)
- Systematic Study of the Early Stages of Drosophilidae, 岡田豊日著, (1968), 188ページ, 文化園芸社(東京都文京区水道町 2-5-5)発行, 定価1200円
- 160 吸蛾類対策としての電灯照明, とくに空間照度の意義について(生態学, 昭和43年度日本農学会大会分科会)
- 果実吸蛾類とその防除
- 電燈照明による吸蛾類の除除 : 第3報 照明による飛来防止について
- 238 アブラムシ類における燐製剤抵抗性の事例(昭和40年度日本農学会大会分科会)
- 145 吸蛾類の活動性と照明条件(昭和40年度日本農学会大会分科会)
- メチルジメトンによる果樹の樹皮処理(塗布)について : 浸透殺虫剤に関する研究 第13報
- 序論・ハダニ類における薬剤抵抗性の諸問題(I 殺虫剤抵抗性の諸問題(第2部))
- 序論・ハダニ類における薬剤抵抗性の問題点(I 殺虫剤抵抗性の諸問題 (第2部), 昭和38年度日本農学会大会分科会)
- 128 果実吸蛾類の分布と被害(昭和34年度日本農学会大会分科会)
- 10 幼虫生長に伴う薬剤抵抗力増大についての一考察(昭和38年度日本農学会大会分科会)
- 蚊族の週期的発生説に対する一批判
- 109. 撒布農藥の消失について(第2報)(日本應用昆蟲學會・應用動物學會合同大會講演要旨)
- メチルジメトンの樹皮塗布による薬害について
- 96 弗化酢酸剤の薬害について(昭和37年度日本農学会大会分科会)
- B413 ネダニ類似ゴミコナダニ属一種について(ダニ)
- 果実吸ガ類の分布および生態一般(II 果実吸ガ類に関する問題点, 昭和36年度日本農学会大会分科会)
- 害虫発生の週期性に関する一考察(I. 害虫発生の週期性, 昭和33年度日本農学会大会分科会)
- 47 散布濃度と回数との組合せについてI(昭和33年度日本農学会大会分科会)
- ウラナミシジミに関する研究 : II. 房総半島における周年経過と移動を中心にして
- 132. 漫透殺虫剤施用法に関する2,3の考察(昭和30年度日本農学会大会分科会)
- 118. 房州に於けるウラナミシジミの生態及び防除(昭和29年日本農學會大會分科会講演要旨)
- 114. 新殺虫剤CDPに關する二三の實驗(昭和28年日本農學會大會分科會)
- 蚊族に於ける成幼虫発生消長のずれについて(第 4 回大会講演要旨)