家蚕における集合性行動の研究 : 第2報 集合性行動に関係する感覚器官について
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概要
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1 1961年晩秋蚕より1962年晩秋蚕までの4飼育期の家蚕,(2:4×5:4),(銀白×瑞光),(支124×日124)を用いて集合性行動に作用する感覚系統について,視覚,嗅覚,接触感覚に大別し実験した。2 暗室を利用して集合性行動を実験すると,光線下の場合とほとんどかわらず,60分後には84.6%の集合率を示し,同時期の光線下の89.4%と大体一致する。ゆえに,視覚は集合性行動には関係ないと見られる。3 木片,画用紙,ゴム片,桑の枯枝に対する反応は,いずれも少なく,生体の接触の場合とは全く異なる。死体についても同様で,家蚕の接触性は,生きた個体相互にのみ発現するものと見られる。4 嗅孔の分布する部分を阻害すると,明らかに個体認知の能力が低下する。これは集合性にも影響し,処理区の集合率は,60分後に31.8%,正常区では83.3%で,嗅覚が,認知に重要な器官であることがいえる。5 桑の各部分(葉柄,枝,樹皮,木部,枯枝)では,桑葉に近いものほど,高い反応を示すが,食性に適しない場合は,いずれも個体間の集合性が発現している。6 個体相互間では,接触によって,群が安定し,移動や外部的な運動は減り,静止状態となる。しかも個体数の多いほど,群は安定する。7 以上の結果から,集合性行動は,先ず,嗅覚によって,個体相互の確認を行ない,接近または接触し,安定した状態をつくりあげる。すなわち,嗅覚,接触感覚が,この行動に重要な器官である。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1963-12-25
著者
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