クワゴマダラヒトリの集合生活期における死亡要因と死亡過程
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概要
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三重県南部地方に産するクワゴマダラヒトリについて, 死亡要因の種類, 卵塊の空間分布, 卵期と幼虫期における集団サイズと生存率の関係を検討した。(1)本種の卵塊は, 産卵樹であるカラスノサンショウに対して数卵塊単位で集中的に産付されていた。(2)卵塊集団は, 卵期, 1齢期を中心にall or none的に死亡し, この大きな原因は多種類のアリ類による捕食であった。(3)卵期の捕食の傾向を検討すると, 捕食は卵塊単位に作用し, 卵塊卵粒数と卵粒捕食率の間には一定の関係はなかった。しかし1本当たり産付卵塊数と卵塊・卵粒捕食率の関係では, 産付卵塊数の上昇につれ捕食率が低下する傾向を示した。(4)ふ化した幼虫集団のサイズと生存率の関係をみると, 集団サイズの減少につれ, 生存率は顕著に減少し, 特に小集団は1齢期に全滅する割合が高かった。(5)調査地域では, 卵期, 1齢期の比較的無防備な時期に捕食者による強度の死亡要因が作用しており, 産卵樹に対する卵塊の集中分布は, この死亡要因の作用を軽減するのに役立っていると考えられた。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1981-11-25