ヒメトビウンカにおける赤眼系統の遺伝と生態について
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概要
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(1) 従来ヒメトビウンカ成虫の眼色は黒色とされているが,1962年10月,札幌市琴似町にある北海道農業試験場の圃場において採集した黒眼個体を同系交配により増殖中,F2世代において未記録の赤眼(orange)個体を発見した。(2) 実験の結果,この赤眼はメンデル式1遺伝子劣性形質の遺伝をすることがわかった。(3) 黒眼,赤眼両系統の生態に関する比較を行なったところ,羽化成虫の性比,産卵粒数,産卵期間については両系統の間に多少の差が認められたが,産卵前期間,ふ化率,幼虫期の死亡率,幼虫の発育速度,羽化成虫の長翅型雌の出現率,飼料の取り替え間隔と長翅型雌の出現率との関係,休眠現象,ムギ北地モザイク病ウイルスの獲得と媒介能力については両系統の間に殆んど差が認められなかった。(4) 野外においては未だ赤眼個体が発見されていないことと,赤眼系統が黒眼系統と生態上大きな差がないことから,今後ウイルスの媒介と本種の生態との関連の研究にこの赤眼系統を標識として利用し得ることが考えられる。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1966-06-25