ヤノハモグリバエの生態学的研究 : I.活動性について
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概要
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(1) 本報告では,昭和30年に行った,ヤノハモグリバエ成虫並に幼虫の産卵・摂食活動の日週性を検討し,活動におよぼす気象要因の影響および3分に1°Cの割合で上昇する温度環境下における活動についての実験結果を取り扱った。(2) 温度と活動との関係では,成虫の微動開始5.13°C,正位5.31°C,歩行開始7.90°C,飛翔開始15.33°C,興奮28.90°C,熱死42.66°Cで,正常活動範囲は7.90∼28.90°C,におよぶものと思われる。幼虫は微動開始4.89°C,匍匐開始6.71°C,興奮25.57°C,熱による不正位の姿勢36.22°C,熱死41.55°Cで,正常活動範囲は,6.71∼25.57°Cにおよぶものと思われる。成虫は幼虫よりも正常活動範囲が広く,且それが高温部に偏する傾向があるように思われる。本種はムギクロハモグリバエに比し,成虫・幼虫共に,低温および高温のいずれにも活動適温の範囲がせまい。(3) 成虫の産卵・摂食活動の日週性をみると,明らかに昼間活動性で,日出後しばらくして歩行飛翔から産卵・摂食活動に移り,日中盛んに活動し日没前後より活動を停止する。すなわち朝の活動開始は,低照度および低温抑制の解消によって始まり,夕刻の活動停止は低照度によって支配されると思われる。したがって朝夕の天気が良い程活動が早く始まり遅くまで続く傾向がある。日中の活動は,気温,日射および照度の増加と共に盛んとなるが,葉上気温が約25°Cを越す場合は高温抑制をうけてかえって活動が弱る。したがって葉上気温が約25°Cを越えない場合は単峰型,25°Cを越す場合は双峰型の活動を示し,前者は春期発生の初期に起ることが多く,後者は発生の中期以後の無風快晴の時に出現することが多い。秒速5m以上の強風は,産卵・摂食活動に対し機械的阻止作用を示すようである。(4) 幼虫の摂食活動は,日中最も盛んであるが夜間も活動は続けられる。気象環境の中で,活動と最も密接なものは気温および日射で,それらの増加と共に活発になるけれども葉上気温約25°Cを越す場合は高温抑制作用が見られる。したがって幼虫の摂食活動も成虫の場合と同様な活動型が現われる。照度および風速は摂食活動に対して大きな影響はないと考えられる。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1957-03-30