ヒラタケを加害する幼生生殖タマバエMycophila speyeri(Diptera : Cecidomyiidae)の同定とわが国への人為的持ち込みの可能性
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概要
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1984年に宮崎県のヒラタケ栽培舎で初めて発見された幼生生殖タマバエは,同属の6既知種との比較研究の結果,ヨーロッパや台湾でマッシュルームの害虫として知られているMycophila speyeriと同定された。このタマバエが在来種か外来種であるかを明らかにするために,全国各地でスィーピングにより採集された多数のMicromyini族タマバエの成虫標本を検鏡するとともに,各地の栽培舎やホタ場などで本種の発生状況を調査した。その結果,野外のタマバエが自由に侵入できる開放環境下で袋栽培や箱栽培を行っている栽培舎や森林内のホタ場ではMycophila属タマバエの発生が見られず,スィーピング標本中にも該当する成虫が存在しなかった。一方,ナメコやヒラタケの瓶栽培を行っている閉鎖環境の栽培舎の一部では,幼生生殖タマバエの発生が認められ,しかも,これらの栽培舎では共通の業者から種菌を購入していたことが明らかとなった。瓶栽培の作業過程では,種菌接種のときに瓶中に侵入する可能性があることから,本種が種菌を通じて栽培舎に広がった可能性が示唆された。これらの結果から,本種は従来からわが国に分布していたものではなく,生キノコや種菌の輸入に伴う侵入害虫であると考えられた。
- 日本応用動物昆虫学会の論文
- 1996-05-25
著者
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