実験的咬合異常がラットの自律神経機能に及ぼす影響について
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概要
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歯科臨床において, 顎口腔機能障害患者に対する咬合改善は顎口腔系の症状のみならず不定愁訴などの全身的な症状をも緩解することが報告されている.しかしながら, 咬合異常が全身に及ぼす影響について実験的に調べた研究は少ない.特に自律神経系に及ぼす影響についてはいまだ明らかにされていない.本研究は, 片側の咬合を挙上することにより実験的に咬合異常を引き起こし, これが自律神経系の調節を受けている血圧に及ぼす影響について検討した.実験には無麻酔のWistar系雄性ラットを用い, 血圧測定には非観血式血圧測定装置を用いて尾動脈から収縮期血圧を測定した.片側の咬合挙上は上顎右側を挙上側とした咬合挙上装置を歯科用セメントにて装着して行った.挙上量は1mm, 2mm, 3mmとし, 装着期間は20日間とした.1mm挙上群の血圧は装着前と比べ有意な変化は認められなかった.2mm挙上郡では, 装置の装着後3日間を除いて装着後1日目から除去後1日目まで装着前の血圧との間に危険率5%で有意差があり, 血圧の上昇が認められた.3mm挙上群では装着前と比較した場合, 装置装着1日後から20日後まで危険率1%で有意差が認められ, 著明な血圧の上昇が観察された.また, 装置の除去により血圧は装着前のレベルまで回復し, 除去1日後ですでに装着前と比べ有意差は認められなくなった.片側咬合挙上装置の装着期間中, 実験動物には体重の減少が認められたことから, 摂食行動の制限が二次的に血圧の上昇をもたらす可能性が考えられた.そこで, 体重減少の影響を検討するため, 一定期間の絶食を行い, 血圧の変動を観察した.その結果, 体重は絶食にともなって有意に減少したが, 血圧には有意な変化はみられなかった.したがって, この血圧上昇は片側の咬合挙上が第一義的な原因となって引き起こされることが示唆された.さらに, この血圧上昇における交感神経系の感よを調べるために, α受容体の遮断剤であるprazosinとβ受容体の遮断剤であるpropranololを用い, 血圧と心拍数に対するそれらの効果を検討した.3mm片側挙上を行ったとき, 血圧は上昇したが, 心拍数には変化は認められなかった.prazosin投与により血圧は有意に低下し, 心拍数に増加の傾向が認められた.一方, propranolol投与では, 血圧は有意に低下し, 心拍数にも減少の傾向が認められた.本研究において, 咬合異常がラットの血圧に影響を及ぼすことが明らかとなった.そして, そのメカニズムには交感神経系の活動亢進が関与していることが示された.これらの結果から, 咬合異常が自律神経系を介して全身機能に変化をもたらすことが推察された.
- 1995-03-31
著者
-
古屋 良一
昭和大学歯学部歯科補綴学教室
-
新谷 明幸
昭和大学歯学部歯科補綴学教室
-
川和 忠治
昭和大学歯学部歯科補綴学教室
-
川和 忠治
昭和大学歯学部
-
古屋 良一
昭和大学歯学部
-
今井 英一
昭和大学歯学部第一歯科補綴学教室
-
吉野 建二
昭和大学歯学部第一歯科補綴学教室
-
古屋 良一
昭和大学 歯学部歯科補綴学教室(顎関節症科)
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