美術表現におけるイメージの形成 : レオナルドのスケッチと記述による一考察
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概要
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美術作品の形成過程における随所で美術家により生み出される、スケッチや見取り図などの予備的諸形体はすべて、先形象(プレフィグラツィオン)と呼ばれる。一般に美術作品の制作を前提として検討されるこうした資料のうち、視覚的な諸表現に注目すると、説明的な性質を持つ図や理論モデルは、素描と異なり作品との直接的な関連性を理解しにくいため、多くの場合考察の対象とならない。しかし、同様に視覚を用い主観を通じての表現である図などを軽視した分析では、多様な事柄に関心を持つ制作者の、本来の特性を捉えきれない可能性は否めない。本論文では、分野、形式、ジャンルを自在に変換しつつ表現を行ったレオナルド・ダ・ヴィンチを例にとって、その手稿におけるさまざまなスケッチや記述を精査し、先形象としての「図的表現」と「美術的表現」との定義やその関わり、それらの発展プロセスを考察することを通して、美術表現におけるイメージ形成が、必ずしも美術作品を意識しない思考の過程でも起こりうることを論じた。
- 文教大学の論文
- 2004-09-01