主観のれん説の総合的検討 : 収益・利得の認識規約(2)
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
前号において,主観のれん説の対象理論上の検討課題として,実現概念の理論的根拠,キャッシュ概念の有意味性,および実現概念の金融商品への援用可能性の3点を挙げたが,本号では,実現概念の理論的根拠の問題を取り上げる。この点については,具体的には,(1) 全体計算の論理の期間計算への援用の問題と,(2) 実現概念の本質規定の問題とを論じなければならないが,(2) は次号で取り扱うとして,本号では,(1) を検討する。斎藤は,「投資に関する将来の期待がキャッシュフローの獲得にある」という命題から,「その期待の実現を測る事実も投資から生じたキャッシュフローである」という命題を導出している。しかし,前者の命題は,投資プロジェクトの全体に関するいわば全体計算の発想であるのに対して,実現そのものは,期間計算上の概念である。そうであれば,まずもって,全体計算の考え方を期間計算に援用できるのかどうかということを,ひいては全体計算と期間計算との関係を,あらかじめ検討しておく必要があったように筆者には思われる。しかし,斎藤には,そうした検討を行なった形跡が見えない。そこで,筆者なりに検討したのが,本稿である。全体計算においては,一般に,損益を直接的に産出する経済財に即してではなく,それと対流関係にあるものとしての収支によって,損益計算が遂行されていると理解されている。したがって,損益を直接的に産出する経済財が,どのような利益の産み方をしようと,それには一切関係なく,収益は現金収入にかかわらしめて,また費用は現金支出にかかわらしめて把握される。斎藤は,おそらく,そうした理解に依拠していると思われる。しかるに,今日,説明の対象になっているのは,期間計算上の損益である。その場合,収支計算では,損益計算は遂行できない。妥当な損益計算を遂行しようとするならば,収支の視点を離れ,当該経済財の損益の産出の仕方を直視しなければならない。例えば現在100を貸し付け,1年後に120の回収を約束したとすれば,貸付金というのは,「その期待収入額は,現在なら100だが,1年後には120になっている」経済財であり,それに現金100を投下したのである。したがって,貸付時点においても,貸付金は,その時点の期待収入額100で測定されなければならない。かくして,金融資産(派遣分資産) の入帳金額は,現金支出額によってではなく,その時点での当該財の収入額によって測定されなければならないわけである。ここに,全体計算の論理と,期間計算の論理とは,峻別されなければならないのである。他方,事業資産(充用分資産) については,たしかに現金支出額によって測定されているが,しかし,これにしても,やはり,事業資産の損益の産出の仕方の特質によって規定されたものであり,けっして,現金支出額の存在によって直接的自動的に規定されたものではないのである。すなわち,事業資産は価値生産販売活動にかかわっているが,この活動は,今日の市場生産のもとでは,他者の欲望充足のために行なわれている。したがって,そこでは,引渡財(犠牲) と対価(成果) との交換が不可欠になる。引渡財は,こうした犠牲を表現しなければならないのである。そうした価値生産販売活動の特質によって,事業資産(充用分資産) への測定値が,支出額になったのであり,全体計算上の現金支出額が,自動的に割り当てられたのではない。ここでも,期間計算の発想は,全体計算の発想とは異なった論理に服しているのである。このように,全体計算の論理と期間計算の論理とを峻別するかぎり,対価の概念にしても,全体計算の視点から,直接的自動的にキャッシュと即断してはならず,期間計算として有意味であるように構成されなければならないのである。これは,期間計算上の実現概念の本質規定の問題に他ならず,この点は,次号で検討する予定である。
論文 | ランダム
- 奄美の生き物たち 生きたおもちゃキノボリトカゲ
- TOKAGE(トカゲ)--特殊遊撃捜査隊(最終回)
- TOKAGE(トカゲ)--特殊遊撃捜査隊(Vol.4)
- TOKAGE(トカゲ)--特殊遊撃捜査隊(Vol.3)
- トカゲ--2006年下半期同人雑誌優秀作