血流の計算可視化
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概要
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生体力学において,血流,気流など流れの研究は,骨や靭帯などに関する固体力学の研究と並んで古くから盛んに行なわれている。最近では,コンピュータ技術の長足の進歩にともない,流体の基礎方程式を数値的に解くことが比較的容易になってきたので,各種の生体内流れの問題が取上げられるようになってきた。心臓血管系の形状は非常に複雑であって,単なるパイプでないことは言うまでもない。しかも,血液は心臓の拍動を駆動力とする非定常な流れであるので,各種疾患との関連における血流の実際の様子を捉えることは非常な困難を伴う。心臓内部,血管分岐部の血流の詳細,特に壁面のずり応力分布など,病変の構造と関連が想定される血流の構造は詳しく知られていない。しかし,数値流体力学シミュレーション,特に,数値的可視化の技術を用いることによって,かなり複雑な領域においても血流の全体像を定量的に捉えることが可能となった。現在のところ,数値計算の結果から決定的なことを言える段階には至っていないが,少なくとも,血流の問題はこれまで概念的に考えられていたより,はるかに複雑であることが示されつつある。本稿では,はじめに,血流の数値流体力学的研究を行なう際に留意するべき各種の問題点についての著者の見解を簡単に説明し,次に,我々がこれまで行なってきた数値流体力学的研究の概要を紹介し,今後の研究の方向について著者の考えを述べる。
- 東海大学の論文
- 1996-03-30
著者
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