シンガポールの若者をとりまく社会環境 : 社会変化が青少年期の心に与える負の影響
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概要
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シンガポールは,独立後30年という短期間で奇跡的経済発展を遂げた。その発展があまりにも急激なため,現在先進国が抱える多種多様な問題も,シンガポールにおいては急速なスピードで進みつつある。それにともない青少年の精神形成に関わる環境も変化している。古き良きアジアの儒教思想が若者の世代には薄れてきているとの危惧の声も多い。これまで懸命に高度成長を達成するためにとられた諸政策が,今日の様々な問題を生み出してきているといえよう。「国土も天然資源もないシンガポールにとって,優秀な人材こそが最も重要な資源」とうたい,人材開発のための教育政策は「エリート教育」と呼ばれるに値する選抜教育である。また,子どもをとりまく家庭環境も,都市化にともない大きく変化している。子どもからおとなへと変容するための多様な課題を抱えた青少年期に,これらの環境は少なからず精神的圧迫感を抱かせているであろう。本稿では,急激な社会変化の適例としてその過渡期にあるシンガポールを取り上げ,シンガポールの教育政策・家庭環境を調査し,それらがもたらす子どもや青年への心理的負の影響を考察する。