アジア諸国の交易条件と貿易自由化の影響 : 韓国,タイ,フィリピン,スリランカのケース (福島義久教授追悼号)
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概要
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本稿では途上国における貿易自由化政策と交易条件の関係について考察し,アジア数カ国の交易条件の決定要因について実証分析を試みる。ここでいう貿易自由化政策は輸入代替から輸出指向へと政策の重点が移っていく過程を指す。途上国交易条件に関する実証研究としては,プレビッシュ・シンガーの長期的悪化命題を検証したものが多数ある。それらに比べると本稿の分析対象期間は短い(1950年代半ば以降)が,安定的な趨勢の存在を前提としたモデルを国別に計測した結果,タイ,フィリピン,スリランカの交易条件には有意な不利化傾向がみられ,韓国については有意なトレンドはみとめられなかった。交易条件の決定要因に関しては,貿易政策指標を含む輸出・入関数を国別に計測し,その結果に基づいて交易条件に対する政策の影響を求めた。貿易政策指標として用いたのは,開放度指標(貿易依存度)と実質為替レートのディストーション指標(自国通貨の過大評価の度合いを推計したもの)である。これら政策指標が交易条件に対して及ぼすと考えられる影響は条件によって異なるが,計測の結果は,開放度指標の値を実験的に高く設定すると全般的に交易条件は不利化するというものであった。実質為替レート指標についての結果は統計的に不明確であったが,自国通貨過小評価の度合を高く(貿易自由化の要因)設定すると交易条件は不利化する傾向がみられた。2節では交易条件の趨勢に関する問題,3節では貿易自由化と交易条件の関連についての問題をそれぞれ整理し,4節で実証分析を行う。
- 1997-10-25
著者
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