加工貿易の理論 : H. O. 型モデル (福島義久教授追悼号)
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概要
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日本は原料を海外から輸入し,国内で加工して輸出するいわゆる「加工貿易」にたずさわってきた。ところが,国際分業理論の文献をひもとくと,最終消費財が貿易されるモデルの分析にはことかかないが,加工貿易の研究は意外にすくない。大山(1997)では,簡単なリカード型のモデルで原料とそれを用いて生産される製品の貿易について,貿易パターンと貿易利益の決定要因を例解した。本稿はその続編であり,ヘクシャー・オリーン型のモデルによって加工貿易のメカニズムを解明することを目的とする。リカード型の貿易モデルは気候・風土ないし利用可能な生産技術のちがいに着目して国際貿易を説明するが,ヘクシャー・オリーン型のそれは要素賦存の相違による国際分業に焦点をあてる。前者は温帯の先進国と熱帯ないし亜熱帯にある途上国との貿易の分析にむいている。これに対して,後者は日本のような天然資源にとぼしい国と資源にめぐまれた国との貿易のモデルとしてより適切である。自国,外国と呼ばれる2国が国内に賦存する資源と労働を用いて原料(中間財)を生産し,原料と労働を用いて製品(最終消費財)を生産するモデルを考え,両国の間の国際分業とその利益について考察する。まず,原料,製品の2財生産モデルを示し, Jones (1965)のよく知られた方法によってストルパー・サムエルソン定理とリプチンスキー定理に相当する関係がなりたつことを明らかにする。次に,資源の豊富な国は原料に,労働の豊富な国は製品に比較優位を持ち,貿易が行われれば各国はその比較優位財に特化するとするヘクシャー・オリーンの分業定理を証明する。また,純生産フロンティアの概念図によって自由貿易均衡がパレート最適であること,各国が自由貿易を通じて利益を享受することを明確にする。最後に,国際的な要素移動の効果を分析し,さらにその結果を再解釈してある国と自余の世界との間の要素賦存の差異が大きければ大きいほど両者の間の貿易量,貿易利益がますます大きなものになることを推論する。
- 1997-10-25
著者
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