創造的組織能力と企業間関係 : 新しい企業間関係を求めて
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
企業を取り巻く環境変化が激しくかつ不確実な今日,様々な経営技法が,企業の存続と成長をかけて用いられている。しかし,それらの技法が成功するためには,企業経営における思考の根本的な変革が行われなければならない。従来の企業経営の思考は効率とコスト削減の追求であった。既存の経営資源を如何に効率的に配分し,安く作れるかが企業の主な関心事であった。従って,企業は規模の経済性の追求や多角化戦略によって巨大化し,階層的な組織構造によって官僚化する傾向があった。しかし,こういった企業は低成長,成熟化,技術進歩の加速,グローバル化した今日の環境で求められる柔軟性や素早さに欠けることになり,十分な競争優位を引き出しえなくなった。この問題を解決するためには経営思考の根本的な転換,すなわち創造、調和中心の経営思考への転換が必要である。それは資源配分の効率性や自前主義から脱皮し,新しいコンセプトの創造や異なる部門・組織間の調和への転換を意味する。本稿では,企業経営における思考の根本的な変革に基づいた新しい概念として創造的組織能力を用いることにする。創造的組織能力とは企業内の経営資源だけではなく,外部の資源も含めて資源を如何に組み合わせ,活用するかの能力であり,三つの下位能力,すなわち資源認識能力,プロセス能力,イノベーション能力から成り立つ重層的なものであると考えられる。そして,成長を前提として築き上げた日本的経営システムの一つである企業間関係,本稿では垂直的(下請け)関係と水平的関係に分けるが,その特徴と変化を分析し,それを創造的組織能力の観点から考察し,企業が継続的な競争優位を生み出すためには創造的組織能力を発揮できるような企業間関係を持つ必要があることを主張する。
- 1996-06-25