生活政策論序説 : 「公私ミックス」論あるいは「公私分担」論の基礎原理は何か?
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概要
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個人から、家族、企業、そして国家までを含むような経済的な公共領域を調整する政策を、ここで「生活政策」とよぶことにする。なぜこのような広い領域での政策論を問題にするのかといえば、それは「公私分担」が叫ばれていた状況から、いわゆる「公私ミックス」と呼ばれる状況が、今日現れてきているからである。このような公私ミックス状況は、単に市場メカニズムだけでは解決のつく問題ではなくなってきていると同時に、政府の公式制度だけでも解決が難しくなってきている問題である。つまり、それぞれ市場と国家が分担すれば、それぞれの欠点を補完できるような「公私分担」という問題状況が今日困難になってきていることが明白になっている。この領域の問題はかなり重層的に起こってきている為に、公私のあいだの問題解決には、柔軟な制度の組み合わせによる対応が必要とされてきている。このような生活政策論の中心的な課題は、上記のように公私のあいだの調整問題であるが、このような公私問題では次のような重層的な問題が複合的に組み合わさって問題群を構成している。たとえば、「営利-非営利」をめぐる問題、あるいは「商品化-非商品化」をめぐる問題、「公式-非公式」をめぐる問題などが、重要な問題として浮かび上がってきている。なぜこれらの問題群が公私問題に加えて、ここでミックス状況を作り出しているのかといえば、それは「市場対国家」という問題だけではなく、もうひとつ「家計」という要素の重要性が今日認識されているからである。つまり、市場と国家という問題以外に、市場と家計、国家と家計などとの調整が、生活政策論として中心的な課題として指摘されてきている。この小論では、このような「公私ミックス」論の基礎原理について検討してみたい。
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