<学位論文要旨>集束イオンビーム/透過型電子顕微鏡法による Mg-Ni 系水素吸蔵合金の微細構造解析
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概要
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水素吸蔵合金は,水素貯蔵機能のほか様々な実用的機能をもつ。そのため,この合金に関する研究は物性研究よりも応用化研究・開発に重点が置かれている。例えばAB_5系やAB系合金については,1970年代前半の合金発見当初から水素精製や中性子減速材,水素貯蔵体などへの応用が検討されている。また,1990年代初めにはAB_5系の水素吸蔵合金が,ニッケル-水素二次電池の負極活物質として,初めて商業ベースで実用化されている。材料的には,溶解法による単相合金の研究から,複相あるいは微細構造に合金の構造を制御することで水素化特性改善のブレークスルーを目指した研究に主流が移ってきている。中でも,Mgを含んだ合金は水素吸蔵量が多いことから,高容量の水素吸蔵合金のベース合金として,構造制御による研究が精力的に行われている。構造制御にはメカニカル・アロイング (mechanical alloying, MA) などの機械的処理法がおもに適用され,ナノメートルスケールの微細構造をもつ様々な合金が創製されている。これらの研究結果は,構造制御した合金の水素化特性,特に反応速度が合金中のナノ結晶粒界の構造特性に大きく影響されることを示唆している。しかしながら,研究の多くが水素化特性を中心とした議論にとどまっており,水素化特性と微細構造特性との相関を詳細に検討した研究は少ない。このように,水素吸蔵合金に関する研究は物性研究よりも応用化研究・開発に重点が置かれる。そのため,議論の対象も水素化特性という一側面が中心になる傾向が強い。それゆえ,水素化特性が発現する本質について理解が進んでいないのが現状である。こうした現状を鑑みて,本論文では以下に示す3点を研究目的とした。 (1) 微粉末粒子の微細構造解析のための,TEM観察用試料の作製技術の構築 (2) MAによる非晶質構造形成過程の解明 (3) 微細構造特性と水素化特性との相関の明確化 つまり,MAにより作製した微細構造をもつMg-Ni系水素吸蔵合金を対象物質に, 集束イオンビーム (focused ion beam, FIB) 加工を利用した微粉末粒子の薄膜化技術と,透過型電子顕微鏡 (transmission electron microscope, TEM) 観察技術とを組み合わせたFIB/TEM法を允駆使し,合金の微細構造特性と水素化特性との相関に焦点を当てた物性研究を行なった。以下に,上記の研究目的に対する成果を要約する。
- 広島大学の論文
- 1999-12-28