<学位論文要旨>対人関係トレーニングの開発と実践に関する研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
第1章対人関係トレーニング研究の意義と展望 対人関係の改善は,集団の中で生活を送る人間にとって,欠くことのできない重要な課題である。こうしたことから,対人関係改善を目的にして様々なトレーニングが試みられてきた。センシティビティ・トレーニング(sensitivity training)やエンカウンター・グループ(encounter group)は,その代表的なものである。本章では,対人関係に関するこれまでの研究を5つの領域に分類することによって,トレーニング研究を体系的に整理し,新たな研究を展開するための理論的枠組みを提示した。5つの領域とは,(1)トレーニングの内部プロセスに関する研究,(2)トレーニングの効果に関する研究,(3)トレーニングの内部プロセスと効果を統合する研究,(4)トレーナーに関する研究,(5)新たな方法論を確立し,技法を開発する研究である。こうした分析をもとに,新たに開発したトレーニングが,(1)リーダーシップに関する独自の理論をベースにしていること,(2)妥当性が実証されたリーダーシップ測定尺度を用いること,(3)現実の組織で得られたデータをもとに実践を進めること,(3)一過性の集中型ではなく,現場における調査データのフィードバックを組み込んで,継続して行うことなど,これまでにない特徴を持っていることを明らかにした。第2章Tグループのプロセスと効果 ここでは,対人関係トレーニングの基本的モデルである,Tグループ成立の経緯とその目的を明らかにするとともに,そのプロセスと効果について検討した。まず,Tグループにおける参加者の感情を測定し,その中では肯定的・否定的感情が混在していること,グループの発達とともに,そうした感情のバランスが変化することを明らかにした。また,Tグループの体験によって,参加者たちが,身の回りに生起する事象の原因を自分に帰属させるようになることを実証した。こうした分析によって,これまでにない視点から,Tグループ体験が参加者に及ぼす効果を明確にした。さらに,Tグループの持つ問題点を指摘し,我が国においては,対人関係やリーダーシップ理論をベースにした"道具的トレーニング"の開発が求められていることを提起した。第3章リーダーシップPM理論に基づくトレーニングの開発と実践 はじめに,リーダーシップPM理論について検討し,それに基づくリーダーシップ・トレーニングの開発の経緯を明らかにした。また,その目的として,(1)人間関係と集団についての科学的知識を習得する,(2)人間関係と集団についての実践的な技術を身につける,(3)人間関係と集団についての実践的な意欲を喚起する,(4)人間関係と集団についての自己学習力を高める,(5)習得した知識や技術を現実の場で生かしていく力を身につけることなどを指摘した。さらに,新たに開発した「基礎トレーニング→職場における実践→リーダーシップ調査→フォロー・トレーニング→職場における実践→リーダーシップ調査→職場における実践」から構成されるトレーニング・コースについて,具体的な内容を明らかにしながら検討を加えた。特に,現場における実践活動を評価した調査結果のフィードバックが行われるフォロー・トレーニングの重要性が強調された。また,調査を少なくとも2回実施することによって,1回目では望ましい結果が得られなかった参加者たちに,行動改善の機会を与えることもその効果をもたらす要因であることを指摘した。こうした,現実の組織における調査を通して妥当性が検証されたリーダーシップ理論に基づいて,複数のトレーニングと現場で得られた調査結果のフィードバックを組み合わせて展開するトレーニング方式は,これまでにない独自のアクション・リサーチとして位置づけられる。第4章リーダーシップ・トレーニングの効果 ここでは,トレーニングの対象領域を,企業集団・教育集団・看護集団に分け,それぞれの領域で実施したトレーニングで得たデータを中心に分析を進めた。まず,企業集団におけるリーダーシップ・トレーニングについては,PM理論をベースに開発したトレーニングのうち,その初期に行われた,集中体験型トレーニングが参加者に及ぼす効果を明らかにした。集中体験型とは,2泊ないし3泊の合宿形式のもので,1回のコースだけで修了するものである。ここでは,製造現場第1線監督者を対象にしたトレーニング参加後の,職場における行動や意識の変化を中心に分析を行った。特に,トレーニング終了3ヶ月後の参加者の行動や意識の変化やトレーニングにおいて決定した目標の達成を阻害する要因を明らかにした。こうした試みは,これまでトレーニング終了直後のデータを分析することの多かったこの領域の研究に,新しい情報を提供した。つづいて,集中型トレーニングの問題点を克服するために開発した,新しい方式によるトレーニング・コースについて分析と検討を行った。
- 1998-12-28
著者
関連論文
- 看護教育におけるコミュニケーション力育成のポイント--5つの視点と教員のリーダーシップ (特集 コミュニケーション教育--学生時代に何をどう教えるか)
- 教育実習生の児童に対する認知の変化 : 実習前,実習中,実習後の「子ども観」の変化
- 職場における規則およびマニュアル遵守を阻害する要因 (1) : 病院における課題の分析
- 対人関係トレーニングの開発と実践 : トレーニング・マニュアル作成の試み(7)
- 対人関係トレーニングの開発と実践 : トレーニング・マニュアル作成の試み(6)
- 対人関係トレーニングの開発と実践 : トレーニング・マニュアル作成の試み (3)
- 男女協働政経塾「コミュニケーションのスキルアップ講座」の効果 : 受講者の自由記述分析
- 教育実習事後指導に対する参加者の評価(3) : 自由記述によるグループ・ワークの効果分析
- 組織の安全とリーダーシップ : ヒューマンスキルの科学
- 教育実習事後指導に対する参加者の評価(1) : 自由記述によるグループ・ワークの効果分析
- 集中講義による「対人関係トレーニング」の2ケ月後の効果
- グループワークによる教育実習事後指導プログラムの開発 : 実習生は,子どもの声をどう受けとめたのか?
- 中学校教師を対象にした対人関係トレーニングの試み
- 集中講義による対人関係トレーニングの試み
- 熊本大学における「フレンドシップ事業」の実践(第3報)
- グループワークを用いた教育実習事後指導プログラムの開発
- 熊本大学における「フレンドシップ事業」の実践(第2報)
- 熊本大学における「フレンドシップ事業」の実践
- 公開講座「リーダーシップ・トレーニング」の効果
- 看護リーダーを対象にしたリーダーシップ・トレーニングの効果
- 社会 A-1 グループワークを用いた教育実習事前指導の効果
- グループ・ワークを用いた教育実習事前指導の効果
- コミュニケーションスキル・アップと病院の活性化
- 教員評価,学級評価に関する教育社会心理学的研究(I) : スクールリーダーのアセスメントについて(自主シンポジウムG5)
- 問題行動の解決のための教師と児童の対人スキルの訓練
- 病院における看護経験4〜5年目の看護婦の行動分析(4)
- 病院における看護婦長のリーダーシップ行動測定尺度の構成
- 看護場面における看護婦のリーダーシップ行動測定尺度作成の試み(1)
- 組織における倫理的行動に関する研究 : 民間企業従業員の自由記述をもとに
- 対人関係トレーニングの開発と実践 : トレーニング・マニュアル作成の試み(8)
- 教育実習生に対する児童生徒の期待
- コンピュータ教育における現状と課題 : 現職教員の意識と傾向
- 実習期間中における養護実習生のリーダーシップに関する研究(2)
- 実習期間中における養護実習生のリーダーシップに関する研究(1)
- 養護教諭実習生のリーダーシップに関する実証的研究
- 養護教諭に関する児童・生徒,保護者,一般社会人,教育学部学生の認識と問題点
- 養護教諭に求められる役割・行動・態度および資質に関する実証的研究 : 養護教諭・一般教諭の認識調査に基づいて
- 学校教育におけるコンピュータ活用の視点(2)
- 書写指導における学習経験年数と指導の効果(1) : 学習経験年数と毛筆書写力
- 保健指導におけるコンピュータの活用
- 利用者指向の学校保健データ処理システムの開発 (3)
- 教育実習におけるグループ・ワーク導入の試み
- 保健室におけるパソコン利用
- 学校教育におけるコンピュータ活用の視点
- 利用者指向の学校保健データ処理システムの開発(2)
- リーダーシップトレーニングにおける自己決定の分析 : 自己決定の内容とその実践結果について
- 音楽鑑賞におけるメディアの違いが鑑賞者のイメージにおよぼす影響
- 利用者指向の学校保健データ処理システムの開発 : (1)生徒健康診断票の作成を例として
- 毛筆作品に対する児童の自己評定と熟練者の評定の差 : 手取法における訓練条件の効果
- いじめの社会心理学的研究
- 毛筆書写技能訓練に関する実験的研究 : 手取り法における訓練回数とその効果
- 児童・生徒が期待する教育実習生の特性
- マイクロ・コンピュータによる学校保健データの分析
- 家庭科教育における高齢者 : 高齢者の生活意識とその分類について
- 中学校における担任・非担任学級の生徒に及ぼす教師のリーダーシップ
- 働くことの意味に関する国際比較研究 : 5カ国の大学生の比較
- 自己実現を求める生涯学習の展開 (特集 『三奪の法』から『五奪の法』--咸宜園の理念の中に、新しい人材育成の灯火を観た)
- リーダーシップと性格に関する実証的研究 : リーダーシップ・トレーニングとのかかわりを中心に
- 看護専門学校におけるクラス担当教員のリーダーシップ : 行動測定尺度の作成とその妥当性
- 原子力発電所の活性化にかかわるグル-プダイナミックス的アプロ-チの展開--6年間のアクション・リサ-チをとおして
- PM理論に基づくリ-ダ-シップ・トレ-ニングの原子力発電所への導入--リ-ダ-シップ,モラ-ル,自己効力感の分析
- 「ゆたかな時代」の職場風土
- PMリーダーシップ類型の具体的行動の多変量解析
- 銀行におけるリーダーシップ行動評定尺度の構成
- 討議集団の発達過程の実証的研究(III) : PM評定尺度の検討
- 討議集団の発達過程の実証的研究(II) : Tグループにおける感情の測定
- 討議集団の発達過程の実証的研究(I) : Tグループにおける位相の測定
- 1 学校における「協同学習」の再生(自主シンポジウム)
- 実践的心理学に求められる測定と評価 : "実践性"と"納得性"からみた教育心理学研究(測定・評価部門,II わが国の最近1年間における教育心理学の研究動向と展望)
- 教育実習事後指導に対する参加者の評価(2) : 自由記述によるグループ・ワークの効果分析
- PF077 教職10年経験者研修のための対人関係トレーニング(ポスター発表F,研究発表)
- 42 学級集団づくりに関する開発的研究の構築(I)(自主シンポジウム)
- 組織活性化のためのリーダーシップ・トレーニング
- 研究の展望と現職教師の評価
- 対人関係トレーニングの開発と実践に関する研究
- 教師の対人関係トレーニング(問題行動の解決のための教師と児童の対人スキルの訓練)(準備委員会企画公開シンポジウム)
- 英語聞き取り試験導入と熊本大学入学者の英語能力(2)
- 組織の活性化とリーダーシップ・トレーニング
- 英語聞き取り試験導入と熊本大学入学者の英語能力(1)
- 銀杏短大における教員のリーダーシップ行動測定尺度の検討(第一報)
- リーダーシップ・トレーニングにおける参加者の評価 : 部下からの評価に対する看護リーダーの分析
- 病院における看護婦に対する看護婦長の行動分析 : 看護婦の回答に基づく看護婦長の行動項目の収集と分析
- 病院における患者に対する看護婦の行動分析 : 患者の回答に基づく看護婦の行動項目の収集と分析
- 書写学習における訓練法の違いが児童に及ぼす影響 : 指導者に対する認知及び学習意欲の分析
- 組織における倫理的行動に関する研究(2) : 民間企業従業員の自由記述をもとに
- 子どもの視点に立った教育に関する一考察 : 小学生のテストを通して
- 職場における規則およびマニュアル遵守を阻害する要因(2) : 病院における課題の分析
- 教員免許状更新講習の評価 : 公表データと実態調査の差
- 職場における規則およびマニュアル遵守を阻害する要因(3) : 病院における課題の分析
- 教育実習生のリーダーシップに関する実証的研究 : 現職教師との比較および実習中の変化