<学位論文要旨>複数企業における環境パフォーマンス評価とその環境監査に関する研究 : 紙類に着目したライフサイクルアセスメント
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概要
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第1章序論 今日の地球環境問題は,現在の社会システム,特に企業体が生産過程で導入する資源及び排出する廃棄物にその大きな原因がある。企業活動を振り返って見ると,企業は大量の資源・エネルギーを消費し,環境汚染物質の排出量を増加させた。それは,企業体の主な目的である利潤追求のため,資源や化石エネルギーを大量消費することにより,生産行為を行うが,その代わりに廃物・廃熱を大気圏,水圏,地圏に排出しているからである。資源の節約,廃棄物の削減が求められているが,中でも地球環境問題の中で最も深刻だと言える温暖化問題の大きな原因とされるCO_2排出を防ぐ上で,システム(企業体)におけるCO_2排出の削減は重要である。そこで,企業活動が環境に与える影響について,それを管理・コントロールしていく仕組みを企業が整備することが必要である。その新たなツールの一つとして環境マネジメントシステムと環境監査,ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment),そして環境パフォーマンス評価の導入が注目されている。国際的には,既にISO (International Organization for Standardization)が1996年9月にISO14000シリーズとして国際規格を発効させており,国内では,ISOの国際規格発効に対し,JIS(Japan Industry Standard)が1996年10月に日本工業規格としてJIS Q 14000シリーズをその対応策として提示した。このような状況下で,複数企業における環境パフォーマンス評価とその環境監査を行うため,企業の業務との関わりが強いこと,およびごみとして排出量が多いと考えられる紙類に着目した。本論文では,1)今まで環境パフォーマンス評価の具体的な事例を報告したものは少ないので,通常では容易には得られない新たなデータの蓄積とともに,具体的な方法論を確立する。2)企業が環境に与えている負荷実態を評価するために,紙の原料の導入から廃棄までのライフサイクルアセスメントを行い,負荷実態評価の指標として,地球温暖化の最大の原因であるCO_2発生量を算出する。3)企業の物質(紙類)を使用・廃棄することによって発生するCO_2発生量を用いて各社の環境負荷低減のためのシミュレーションを行い,今後各企業における最も有効な取り組みを見い出す。4) ISO14000シリーズにおける企業の環境監査や環境パフォーマンス評価の基本的な枠を構成・提供することを目的とした。第2章企業における環境問題の認識度と調査協力 ここでは,企業の環境問題の認識度と調査協力について述べた。1995年に広島に本・支店を設けている企業200社に環境パフォーマンス評価を行うため,調査協力依頼書を郵送し,戻ってきたアンケートからその結果をデータベースとして分析を行った。その結果,うら紙使用率は調査承諾と非承諾の企業ともに,ほとんどの企業でうら紙を2割ほどすでに使用していることがわかった。うら紙処理方法に関しては,実態調査を承諾した企業は,「サイズ・質別に分類せずにうら紙BOXを設置して再利用」「サイズ・質別に分類しうら紙BOXを設置して再利」「資源ごみとして排出」する傾向が調査非承諾の企業より多かった。雑誌の処理方法に関しては,調査承諾した企業は,「すべて資源ごみとして排出」,「非発生」,「その他(資料として保管,個人が持ち帰る,自社で焼却)」が調査非承諾の企業より多い傾向が見られ,調査承諾した企業の環境意識の高さがわかった。従業員の規模と延べ床面積の規模では,従業員の規模は31-50人,延べ床面積は101-500m^2の企業が承諾率が最も高かった。第3章環境負荷算出のためのライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment) ここでは,環境負荷量の算出のためのライフサイクルアセスメントについて述べた。企業が製品(紙)を使用することにより,原料調達段階から廃棄段階までにわたってどれだけ環境に負荷を与えているのか,また,どれだけ環境への負荷を削減できるのかを評価・検討するために,ライフサイクルアセスメントを行い,負荷指標としCO_2発生量を用いて,環境負荷を具体的な数値として表すことを試みた。その結果,企業が紙を1t消費するごとに,原料調達段階では上質紙の場合0.08tのCO_2が,再生紙の場合0.02tのCO_2が発生することがわかった。原料加工段階(パルプ化)では上質紙は0.98tのCO_2が,再生紙の場合0.20tのCO_2が発生することがわかった。製造段階では上質紙・再生紙とも1tのCO_2が発生することがわかった。消費段階では上質紙・再生紙とも0.004tのCO_2が発生することがわかった。再資源化段階では,再生紙(古紙混入率80%)で0.22tのCO_2が発生することがわかった。廃棄段階では,燃焼処理において1.7tのCO_2が発生することがわかった。
- 1998-12-28
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