<年報>多文化時代の特殊,普遍,キリスト教 : 多文化主義から新自然法論へ
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概要
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現代は「多文化時代」と言われる。文化的違いに基づく衝突紛争は昔からあったことであり,現代だけが「多文化」な時代であるというのは誤りと思われるが,しかし近代的個人主義及び民主主義による「無文化」的及び「同一文化」的な紛争解決方法とは異なった新たな規範的枠組みとして,文化的差異の積極的承認による「多文化」的解決が主張されているという点で,現代を「多文化時代」と称することには,規範的レベルで積極的な理由が存すると言えよう。その理論的根拠づけを主として担ってきているのが「多文化主義」と類型化される諸理論である。しかし本稿では,「多文化主義」に基づく枠組は不十分であることを指摘し,それに代わる多文化時代の枠組みを生み出す理論的基盤として「新自然法論」を提示すしようと試みる。新自然法論は「普遍」的な基本善を基盤とした枠組みを提出するが,「特殊」を否定することなく,むしろ積極的に肯定する。それは基本善の「共約不可能性」「前道徳的性質」「自明の共通分母性」という性質による。異なった者の間でのグローバルで発展的な対話は,「普遍」と「特殊」を統合的に位置づけようとするこのような枠組みにおいて可能になるのではないかと思いわれる。そして最後に,新自然法論が,多文化時代における様々な特殊を普遍という地平で融合させうると共に,その地平がキリスト教の語りかけに耳を傾ける道を開くものでもあることを指摘する。
- 青山学院女子短期大学の論文
- 2001-12-25
青山学院女子短期大学 | 論文
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