<試論>身体性の社会学の必要性と可能性
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概要
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本稿はディスコミュニケーションの問題を糸口に吉田社会システム論の問題点に言及するものである。吉田は発信・送信・受信と要素別にディスコミュニケーションの原因を捉える立場をとるが,ベイトソンらのダブルバインド論では分裂病を或る情緒的関係性の中で発生する現象と捉える。吉田は暗黙のうちにホメオスタシスを好ましい状態と捉えているが,家族ホメオスタシスとはポジティヴフィードバックがネガティヴフィードバックによって固定される悪循環である。「主体性」を超えたシステムの潜在性によって生ずるところにディスコミュニケーション問題の本質があるが,近代個人主義的人間観を暗黙のうちに前提とする吉田の方法では十分にそれを扱えない。吉田社会システム論は均衡原理(可能性)だけでなく生命現象以降に固有の許容原理(必要性)を導入した点で独創的だが,非許容均衡状態の扱いをみると均衡原理(可能性)優位の発想をなお残している。「主体性」を超える許容原理に関わる問題を視野に収めた社会システム論や社会情報学の構築には,ダブルバインド状況などの「意図せざる結果」論を含み,生活世界の深層を射程に入れた「身体性の社会学」が必要である。
- 1992-03-25
論文 | ランダム
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