油脂の自動酸化速度定数の温度依存性
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概要
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食用油脂の自動酸化の全過程,すなわち開始期,連鎖反応期,終止期を記述する速度式は著者の一人によってすでに提案されている。この速度式は開始期における光による活性メチレン基からの水素原子Hの離脱,連鎖反応期におけるパーオキシラジカルによる活性メチレン基からの水素原子Hの引き抜き,終止期におけるパーオキシラジカルの重合とハイドロパーオキサイドの分解の各過程を代表する項からなる。各反応の速度定数をK_0,K_1,K_2,K_3とすると,光はK_2(重合)以外の速度定数に影響を与えることが明らかにされている。本報告では速度定数K_0,K_1,K_2,K_3の温度依存性を明らかにする。温度がK_0に与える影響は小さく,5∿65℃の温度上昇によるK_0の増加は3倍程度であった。一方,K_1,K_2,K_3に対してはほぼ通常の化学反応に対する程度の影響を与え,各反応の活性化エネルギーは60∿90[kJ/mol]であった。各速度定数をArrhenius式で近似して,過酸化物,重合物および分解物の蓄積量の経時変化をシミュレイトすると,0℃程度の低温の場合は全ての反応の進行は遅く,油脂の酸化は進まない。常温(25∿75℃)程度においては,低温では連鎖反応によるハイドロパーオキサイドの蓄積が支配的であるが,温度の上昇に伴ってハイドロパーオキサイドの分解速度が大きくなり,生成したハイドロパーオキサイドは速やかに分解物となる。100℃以上の高温にも同じ速度式を適用すると,ハイドロパーオキサイドは生成とほぼ同時に分解されて,初期から分解物が蓄積されることが示された。
- 和洋女子大学の論文
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