米国多民族社会に於ける小数民族の動向分析'その2' : 新・旧日系移民の場合
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概要
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日本に長期滞在している白人を観察していると,その多くは西洋と東洋の文化の差を認めながらも,日本人と交際を保ちつつ日本の社会で暮らしている者が一般的な状況である。精神衛生的な観点にたって彼らの行動をみると,彼らの多くは母国で習得した価値観は維持しているものの,日本語の上達ぶりが目立ってきており,また,最近ではホールが提唱した東洋の高コンテキスト社会に於ける精神文化をかなり深く理解している者がいる。これらの欧米人たちの多くは自国の同胞と固まって,いわゆるエスニックコミニュー二テイの中で暮らすのではなくそれぞれ個別にアパート暮らしをしている者が多々存在する。従って,彼らには,例えばアメリカで言う"リトルイタリーやリトルトウキョウといった閉鎖的な社会を創設することなく,自由な生き方をしているのである。また,日本に住む白人たちがパーティや集会で自国民をみると,ごく自然に挨拶や会話を交わし,別れて行く。このような状況は戦前(そして戦後の一定期間)のアメリカに於ける日系人のライフスタイルとは対照的である。それは,日系人たちの多くは彼ら自身が築いた日系社会で生きるなかで同胞との人間関係に苦しみを味わったことでいえる。しかし,日本に住む白人たちがこのような状態で暮らす背景には現時点に於ける社会環境や,国境を越えた人々の価値観の変化が影響していると考えられる。この原稿は,アメリカで最近日本から移住した移民,俗に"新移民"と呼ばれる人々の間での人間関係を戦前の移民のそれと比較してどの様な変化が生じているのかを探ることにある。
著者
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