<論説>鍾山のある情景 : 王安石詩考
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概要
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北宋期に新法を擁して政治経済の改革を推進した政治家として著名な王安石は、当時を代表する詩人の一人と目された人物でもあった。ここではその詩中に繰り返し登場する「鍾山」という題材を取り出し、その描かれかたを追いながら、彼の詩の持つ性格について考察する。官遊中の詩に描かれた、遠方から望み見られた鐘山、引退後に江寧府から仰ぎ見られた鐘山、また山中に身を置いて描かれた鐘山のそれぞれの姿は、その時々の彼の心情を反映したものであると同時に、当時の士大夫に広がっていた買田徙居の風潮や、彼自身の為政者としての自負といった社会的な背景を反映したものでもある。また、より彼の内面的な傾向に関わると思われる繊細な美しさに対する志向は、北宋中期の詩における晩唐詩の受容を考える資料となるべきものであり、その繊細な美的感覚と、社会的存在としての自己に対する意識や自負の強さという、相い異なる要素が、一人の人物、さらには一篇の詩のなかに併存している状況を指摘することができる。そのような状況は、一面で王安石をはじめとする文人官僚たちの精神の幅広さを示すものであると同時に、彼らのそれぞれが内に抱く不安定さを窺わせるものでもあり得るのではないか。
- 三重大学の論文
- 2002-03-25
三重大学 | 論文
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