<論文>中学生の学習観と学習に対する権利意識 : 川崎市での調査から
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概要
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本稿は, 従来主に教育法学で論じられてきた「学習権」の概念において, 学習主体側の権利行使の対象や範囲が十分に検討されていない状況に鑑み, 子ども自身の学習に対する権利意識という原点に立ち返り, 改めてその実態を質問紙調査によって明らかにすることを目的とし, それに対応した新たな学習権論の構築に寄与するような問題提起を目指している。調査結果からみえる基本的特徴は, (1)調査対象の中学生の多くは学習の重要性を認めている, (2)にもかかわらず, 学習の場としての学校の存在意義はあまり認められていない, (3)生徒は主体的学習を望んでいるが, 学習活動の構築に主体的に関与する行為については権利とはとらえず, その行使も求めない, (4)さまざまな学習の側面を一様に権利とはとらえず, 側面ごとに権利意識の強弱に差が生じている, の4点にまとめられる。この結果を「領分」という言葉で捉えなおすと, (1)生徒は自分の領分をきちんとわきまえつつ教員の領分をも尊重する, (2)それでもある程度は教員に学習上の疑問や思いを受けとめて欲しいと考える生徒が少なくない, (3)学校や教員の領分には直接関係しない進路の選択行動については, 自主性・主体性を思う存分発揮したいという生徒が非常に多い, という3つの特徴が指摘できる。これらを総合すると, 学習において権利を行使すべき範囲を自ら限定的にとらえ, その枠の中で権利行使したいと考える傾向があることが分かる。その枠の基底には, 「教員の領分」「生徒の領分」という, おとなたちの手によって子どもたちの間に形成されている暗黙の了解があると考えられる。これらのことが示唆するのは, 学習権の内実がおとなたちによって容易に操作されうるという可能性であり, 子どもの学習権に関する議論は, 子どもの視点から, あるいは子ども自身の声に耳を傾けながら進めていかなければ, おとなが規定する子どもの学習権に陥る危険性が常につきまとうと思われる。
- 2002-03-31
論文 | ランダム
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