高度経済成長期における関東地方の農業生産の地域的変化
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概要
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1960年代以降の農業類型分布パターンの変化は, 永年にわたってわが国の農業の根幹をなしてきた米作主体の主穀生産中心のあり方が, 1960年代に始まる高度経済成長を契機としてドラスティックに変貌した状況に対応したものである。1962年のパターンは, 関東地方の農業が未だ主穀生産に大きく依存していた段階のもので, 巨視的には米作に適した平野部のほとんどは米型市町村になっており, 米作に不利なため諸種の部門の複合からなる複合型市町村の卓越する周縁山地部と対照的な配置をみせていた。ただ京浜郊外圏の台地部には1990年に比較すれば小規模な野菜型および畜産型の集中地域が存在し, すでに大正期から昭和戦前期に小田内通敏^<15)>や青鹿四郎^<16)>らによって指摘されていたチューネン圏的配置パターンがかなり明瞭に残存していた。しかし高度経済成長期における農産物需要構造の高度化と, 成長部門の選択的拡大を図ろうとする基本法農政, さらにはこの時期におけるトラック輸送の普及と高速道路その他の道路網の飛躍的な発達などが相俟って, 関東地方各地の市町村では, それぞれの自然的・社会経済的な環境条件に応じた多様な営農の展開が可能になった。1960年代末以後の米の生産過剰と1970年代における米の生産調整政策は, 米作以外の成長部門の生産拡大を加速させた結果, 1990年までに平野部の市町村の多くは米作のウェイトを低下させ, その一方で野菜と畜産のウェイトを増大させた。 高度経済成長期に爆発的な人口増を経験し, その結果として急激に近郊圏を外縁方向に拡大させた京浜地域の市町村では, 野菜生産への依存度をさらに強めるとともに, その周縁市町村でも野菜生産のウェイトを高めた結果, 野菜型市町村の分布範囲は1962年当時に比較してはるかに広範囲に拡大した。野菜生産に特化した京浜近郊圏とその周縁地域の外方の平野部では, 利根川下流域を中心とする沖積平野部の一部と, 群馬県の那須扇状地の一部や鬼怒川中流域に米型市町村の残存がみられるが, それら以外の大部分を占める台地の平地農村部では, 野菜・畜産・米などの主複合型市町村が圧倒的に多く, それらの中に中郊農業地域ともいうべき野菜や畜産に特化した市町村が混在するようになった。また最外縁部でとくに冬季温暖な気候に恵まれた, 銚子半島周辺や南房総には野菜や花卉の暖地性の輸送園芸地域が形成された。一方, 平野部を北から西にかけて取り巻く, 茨城県および栃木県の北部から群馬県の大部分にかけての山地と, 埼玉県・東京都・神奈川県のそれぞれの西部を占める山地, 千葉県の房総半島中部・南部などでは, 一部にコンニャクいもを主とする工芸作物型市町村や高冷地性の野菜輸送園芸に特化した町村を含みつつも, 畜産に依存する市町村が卓越するに至った。このような1990年における農業類型別市町村の分布パターンは, 1960年代初頭のそれと同じく, 基本的には関東地方の地形配置と京浜地区からの距離的位置に規定されたものであるが, 京浜近郊野菜園芸圏の拡大, その外方の平野部における米型市町村の減少と野菜型および畜産型市町村の増加, 周縁山地における複合型市町村の激域と畜産型市町村の増加などの点において大きく異なるものとなっている。
- 1995-03-20
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