旱魃が大豆の生育に與へる影響特に開花に関して
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概要
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本実験は, 土壤水分条件を異にした三区, 即ち, 全期間を30%にした旱魃区(A区), 開花期間のみ30%の旱魃区(B区)及び全期間70%の無処理区(C区)を設け, そこに大豆品種「赤莢」を栽培して, 各区の示す生育・開花の状態を検討したものである。殊に, 着花及び結莢の旱魃による減少の原因を明かにしようと試みた。実験結果の概要は次の如くであつた。(1) 旱魃状態においた両区は, 無処理区にくらべて, 一般的生育を著しく阻害された。殊に, 全期間旱魃区に於ける草丈, 有効節数及び分枝数の減少は顯著であり, 又, 開花期間旱魃区では, 旱魃処理開始後, 直ちにその草丈の伸長が抑制された。(2) 両旱魃区に於て, 全着花数が著しく減少したが, 各区共, 主莖上及び分枝上の着花数の比は, 略々一定(1 : 3)であつた。又, 全期間旱魃区に於ては, 下位節の着花数減少が顯著で, そのため作物体上に於ける着花の様相が, 全期間旱魃区は概ね菱形, 無処理区では三角形, 又, 開花期間旱魃区では概ね両者の中間形を示した。(3) 開花所要日数には, 各区間に差を認め難かつたが, 全期間旱魃区では, その上位及び下位節に於ける開花始が, かなり遲れる傾向を示した。又, 開花期間は, 両旱魃区ともかなり短縮し, 特に全期間旱魃区に於ける上位及び下位節の花は, 着花数の激減に伴つて, 著しくその期間を短縮した。(4) 落花率は, 全期間旱魃区に於て最も多く, 無処理区に於て最も少なかつた。又, 全期間旱魃区の主莖上に着花したものと, 開花のおそいものの落花が顯著であつた。(5) 莖中の水分含量は, 全期間旱魃区に於て常に少く, 殊に同区の上位及び下位の部分の水分含量は, 無処理区よりも遙に少なかつた。(6) 各節の葉面積は, 旱魃を与えることによつて, 著しく減少した。又, 各節の着花数と葉面積とは, 概して平行的に増減することが判明した。(7) 結局, 旱魃による着花数の減少の理由は, 全般的な生育の減退, 就中, 葉面積の減少による所が大きいと考えられる。又, 両処理区の植物体の上位及び下位の節位に於ける着花数の減少は, その部分に於ける莖内水分の減少の影響を受けるものと考えられる。一方, 旱魃区では, 処理による上述の生理的異常の結果, 特におそくに開花したものの活力の減退が想像され, その結果, これらが大部分落花してしまうことが, 旱魃区の落花率を増加させる一原因と考えられる。
- 京都府立大学の論文
- 1953-09-01
著者
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