<事例研究>ダウン症青年と音楽 : 共感的関係をめざして
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概要
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本論は,音楽好きのダウン症の青年Mと計23回,4ヵ月半にわたって音楽活動を共にしてきた記録である。一緒に音楽を通して楽しみながら,音楽性と人間関係を広げていくことを主なねらいとした。明確に先を見通した具体的な計画を立てることはしないで,Mの実態と筆者がどのようなかかわりをもちうるか探りながら,状況に応じてそのつど,最もよいと思われる方向を決めていくという方法をとった。 23回のかかわりは,第1期-出会い,第2期-歌によるアプローチ,第3期-手拍子によるアプローチ,第4期-打楽器によるアプローチに分けられるが,その間,音楽面では体全体で音楽を感じ,体でうたう様子をみせ,オルガンのみに固執していたものが打楽器活動へと広がりを見せた。また対人面では,当初,筆者とのかかわりをもとうとしなかったのであるが,次第に筆者の手をひいて歩いたり,筆者の姿を見てうれしそうに笑うようになっていった。 この出会いをとおして,Mも筆者も一人だけの音楽から二人の音楽の世界をもつこと,つまり合奏を楽しみ,呼吸をあわせることができるようになった。そしてこれらから得たことは「「心の声」「体と心の叫び声」である音楽は声を出して「うたう」ことのみではなく,体全体を使って,手をうって,楽器を演奏してなど,うたい,音楽を楽しむことにある。」ということである。
- 1989-03-11
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