スペイン語における再帰文
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概要
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"Se"によるスペイン語動詞の再帰化は, The book sells well.のような中間再帰形(middle reflexive)も, あるいは擬似受動態(pseudo-passive)をも含むばかりか, 意味内容は同じだが再帰代名詞化によって独特のニュアンスを添えるだけという, いわば一種の異形(variant)とも余剰(redundant)とも受けとられる形をも含み, 実に多様である。むしろ本来の再帰形よりこうしたオプショナルな再帰形の方が頻度が高い。また自動詞も再帰化してしまうなど, なかなか一筋繩では解決できない問題を含んでいる。まして形態上, 受身形・非人称形ともまったく同じ形をとるので, 意味解釈上どこにその境界を引くか, つねに論議の的になってきた。本稿で敢えて従来の分類に従わなかったのは, 以上に述べたような多様な意味構造に対応できなかったからである。本稿での論点は次の二つに集約される。モリーナ・レドンドが設定した, いわゆる通常の再帰形を含む広い意味での中間態(middle voice)は, そのかなりの部分が, 1)動作主格(agentive)および, みかけ上の行為者である経験者(experiencer), 受益者(beneficiary)が欠落する(構造表示ではΦで表わされる)ことによって, すなわち使役変形とはまったく逆の方法によって派生できること(decausative), 2)法範ちゅうの受益者格(modal benefactive)から導かれる再帰変形が多いこと。これによって与格代名詞が表わす, いわゆる動詞の行為に何らかの形で参加する含意人称代名詞の役割が意味上矛盾なく説明できること。最後に, 従来動詞の内的形態(forma interior)として片付けられていたあいまいな部分に, 再帰形の側面から光をあててみた。私論では"ocurrir", "olvidar"のような一連の動詞はその派生の仕方が二種類の異なった構造によることを裏付けし得たように思う。しかし個々の動詞の格の枠組(case frame)に関しては, 受身形・非人称形の意味論的アプローチとともに今後の研究課題として保留しておきたい。本稿では, スペイン語における「格文法」の有効性, とりわけフィルモアーとチェイフの両理論を比較検討して, そのスペイン語への適用の仕方に矛盾のないことを立証している。
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