絵画資料の分析による小磐梯山山頂の旧形と1888年噴火経過の再検討
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概要
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歴史時代の地形を復元するには, 地形学においては従来地質学的データに比し等閑視されがちであった絵画資料を, より活用すべきである。さきに筆者は磐梯山1888年噴火の多段階崩壊仮説を呈示したが, 本論文では絵画資料を用いてその補訂を行う。新たに得られた噴火実況スケッチは新田図と小林手書き図で, 前者は噴火の模様を描き, 小磐梯の形態と名を記入し, 頂上付近を残したまま噴煙を南東になびかせているなど, 筆者の多段階崩壊説を支持する。後者には5段階の噴火過程が描かれており, 小林印刷図や大伴図との対比により, 噴火の過程がより詳細に解明された。次に磐梯山の三つの山頂を同じ方角から描いた江戸時代後期以降の絵の形態表現の正確さを比較し, 江戸後期の真景図は部分描写に優れていることを知った。噴火で失われた小磐梯の山頂の細部は不明確であったが, 江戸後期の真景図 (遠藤香村「信遊紀行図絵」と白雲「磐城紀行図巻」) および高島北海の絵を用いて地形模型を作成し, 小磐梯山山頂にそれぞれ二つの突出部を持つ二つのピークがあったと推定した。この模型と写真との照合から, 筆者の多段階崩壊仮説, すなわち「1888年磐梯山噴火の第一段階に山腹の現銅沼付近に崩壊が発生した」という推論に, 今回さらに「ほぼ同時に山頂部の北東端のピークないしは突出部が崩壊した」という想定が付加された。
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