遠地実体波解析による1999年9月21日台湾中部集集地震の震源過程 (英文)
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概要
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Teleseismic body waves recorded at IRIS Global Seismographic Network are analyzed to investigate the source rupture process of the 1999 Chi-Chi earthquake. The azimuthal coverage of seismograph stations is good enough to resolve some details of heterogeneous moment-release. The source parameters obtained for the total source are: (strike, dip, slip)=(22°, 25°, 67°); the seismic moment=2.8×1020 [Nm] (Mw=7.6); the source duration=30 [s]; the fault area=75×40 [km2]; the average dislocation=3.1 [m]; the stress drop=4.2 [MPa]. These values reveal typical features of large subduction zone earthquakes. A notable aspect of this earthquake lies in the highly heterogeneous manner of the moment-release. In the southern source area including the initial break, several small subevents were derived, which may be interpreted as ruptures of fault patches with a smaller length-scale. On the other hand, two large asperities with a length-scale of 20km were obtained in the northern part of the source area: one in a shallow western part and the other in a deeper eastern part. The local stress drop on the former asperity was as high as 20MPa and the fault slip exceeded 8m, which is comparable to the ground displacement as inferred from both strong motion and GPS data. A high dip-angle nature of branch-faults in accretionary prism resulted in a considerable uplift of the hanging wall.グローバル広帯域地震計観測網の遠地実体波記録を用いて, 1999年台湾中部地震の震源過程を調べた.観測点の方位分布は良好であり,大まかな不均一断層すべり分布が抽出された.主な震源パラメーターは次の通り.断層メカニズムは東傾斜面の衝上断層で(走向,傾斜,すべり角)=(22°, 25°, 67°);地震モーメント=2.8×1020Nm (Mw=7.6);破壊継続時間=30s;断層面積=75×40km2;平均すべり量=3.1m;平均応力降下=4.2MPa.これらの震源パラメーターは沈み込み帯におけるプレート境界大地震の標準的な値である.しかし今回の地震の際だった特徴は断層すべりの不均一性にある.まず,破壊開始点を含む断層面の南側の領域では,比較的小さい断層パッチが次々と動いたことが示唆された.一方,断層面の北側では,さしわたし約20kmの2つの大きなアスペリティ(大きい地震時すべりを起こす領域)が動いたとの結果が得られた. 1つは西側の浅いところ,もう1つは東側の深めに位置する.浅い方のアスペリティでは応力降下が26MPa,すべり量は8m強である.このすべり量は, GPSデータや強震記録から推定された断層上盤側の最大変位量と同程度である.付加帯内部への分岐断層の特徴として断層面の傾斜が比較的高角であるため,プレート上面の地震の場合と比べて,上盤側の隆起量が大きい.仮に震源が海底にあったとすると,地震の規模から経験的に予測されるより大きい津波を引き起こしたはずである.
- 東京大学の論文
著者
-
八木 勇治
東京大学地震研究所
-
山中 佳子
東京大学地震研究所
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菊池 正幸
東京大学地震研究所
-
菊地 正幸
Earthquake Research Institute University Of Tokyo
-
山中 佳子
東大 地震研
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