マツ属の二葉松類および三葉松類の核学的研究(林学科)
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概要
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マツ属の核学的研究は, 種の類縁関係, 系統発生, 進化に関する知見を得るのに役立つだけでなく, 林木育種に関する基礎的研究として重要である。著者は本研究において, まずマツ属の核型分析に適するミクロテクニックを開発し, この方法でマツ属の二葉松類8種, 三葉松類2種の核型を明らかにすることができた。著者の改良した冷・温処理法は, 特に二次狭窄の観察に適当であった。その手順は, 前処理として根端を水の入った管瓶にとり, 48時間氷塊で冷却し, 続いて20∿25℃で1∿2時間温処理を行なうものである。固定には酢酸アルコール(1 : 3)を用い, 60℃の1規定塩酸で解離し, フオィルゲンおしつぶし法でプレパラートを作製した。[table]染色体の形態を数的に表現し, 種間の核型を比較する目的で, 相対長, 着糸点指数, 腕長比およびTF値を用いた。マツ属のすべての種の染色体数は, 例外なく2n=24であることがわかった。それらは染色体の形態的特徴に基づいて, 二次狭窄型, 中部着糸点型および次中部着糸点型染色体の3群にわけ, 各群ごとに長さの順に配列しそれぞれに記号を付した。即ち : 1)二次狭窄型染色体 : SC_1,SC_2,SC_3のように記号する。2)中部着糸点型染色体 : M_1,M_2,・・・, M_7のように記号する。3)次中部着糸点型染色体 : SM_1,SM_2のように記号する。各群に属する染色体数は, 二次狭窄型染色体では2∿3対, 中部着糸点型染色体では7∿9対, 次中部着糸点型染色体では1∿2対で, 種によってそれぞれ異なっていた。本研究においては, 染色体をSC_1,SC_2,SC_3;M_1,M_2,・・・, M_7;SM_1,SM_2の順に配列した。したがって核型式は次のように表示された。(1)二葉松類の核型1)Pinus densiflora S. et Z.=K(n=12)=3SC+7M+2SM 2) Pinus thunbergii Parl.=K(n=12)=3SC+7M+2SM 3) Pinus thunbergii X Pinus densiflora F 1=K(2n=24)=6SC+14M+4SM 4) Pinus luchuensis Mayr=K(n=12)=3SC+7M+2SM 5) Pinus insularis Endl.=K(n=12)=2SC+8M+2SM 6) Pinus pinaster Ait.=K(n=12)=2SC+8M+2SM 7) Pinus echinata Mill.=K(n=12)=3SC+8M+1SM 8) Pinus virginiana Mill.=K(n=12)=3SC+8M+1SM (2)三葉松類の核型9)Pinus elliottii Engelm.=K(n=12)=3SC+8M+1SM 10) Pinus taeda L.=K(n=12)=2SC+9M+1SM上記の核型式で, 3SCはSC_1,SC_2,SC_3を示し, 7MはM_1,M_2,・・・, M_7を示し, 2SMはSM_1,SM_2を示すものである。マツ属各種の染色体の長さ(相対長), 着糸点指数およびTF値について詳細な分析をおこなった結果, マツ属における種の分化は, これまで考えられていたように遺伝子レベルだけでなく, 染色体の構造上の変化も関与していることが推定された。また, それらの値は種特有のものであることがわかった。
- 琉球大学の論文
- 1975-12-01
著者
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