<原著>文記憶, 文理解, 発話産出における活性化拡大理論
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
本論文では, 文記憶, 文理解, 発話産出に関する活性化拡大理論についてレビューした。活性化拡大理論は, 内的表象に焦点を当てた場合, ネットワークモデルと特徴モデルとに2分することができる。特に後者は近年, 並列分散処理(PDP)モデル(McClelland & Rumelhart, 1986)として発展してきている。まず, 文記憶について, ACT^*モデル(Anderson, 1983)とPDPモデルとを比較すると, 連続的な活性化の拡大メカニズムに関しては, 両者に共通点を見い出すことができる。しかしながら, 抑制メカニズムについては, ACT^*モデルは減衰パラメータのみによって制御されているのに対し, PDPモデルではそれに加えて, 促進的結合と抑制的結合とが仮定されている。次に, 文理解について, 多様な機能を有するメンタル・ノードのネットワークを仮定するノード構造理論(MacKay, 1987a)とPDPモデル(McClelland & Kawamoto, 1986)とを比較した。特に, 文脈上の多義性を解消するプロセスに関して, Kintsch (1987)のモデルを介して両者を比較した。最後に, スピーチ・エラーの観点から, 発話産出に関する活性化拡大理論について検討した。ノード構造理論によれば, スピーチ・エラーは, プライミングにおける活性化・自己抑制サイクルのゆらぎとして把握される。一方, Dell (1986)のモデルによれば, スピーチ・エラーは, 階層的ネットワーク表象において, 活性化の拡大によって起動されるフレーム・スロット規則の適用の失敗としてとらえられる。上記のように, 活性化拡大理論は様々な観点からモデル化がなされているが, 内的表象の性質, 活性化・抑制メカニズム, 制御規則の3点から考察を加えることができる。また, 活性化・抑制メカニズムと制御規則は, ボトムアップ規則とトップダウン規則に各々対応している。全体のまとめとして, 文の記憶, 理解, 産出といった問題を扱う場合に, どのレベルの内的表象が適切であるかについて議論し, さらに, PDPモデルのように, 基本的にはボトムアップ規則のみを用いるアプローチと, 他のモデルのようにトップダウン規則をも併用するアプローチとを比較検討した。そして, 内的表象, 活性化・抑制メカニズム, 制御規則間の複雑な相互作用をモデル化する上で, コンピュータ・シミュレーションの意義について言及した。
- 名古屋大学の論文
名古屋大学 | 論文
- 大隈半島における完新世の環境変化とそれに与えた火山噴火の影響
- 五島列島,鬼岳火山群基底の海成更新統
- 貝化石年代からみた古海水準変動 : 特に多摩川・鶴見川低地を例として
- 豊臣秀吉文書の概要について
- 海賊禁止令をめぐって