<論文>ハロエタンの真空紫外光分解反応について : 光分解初期過程における塩素原子の発生
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概要
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CF_2ClCH_2Cl, CF_2ClCHCl_2, CF_3CHCl_2, CH_2ClCH_2Cl等の一連のハロエタンについてのキセノン共鳴線(147 nm)による光分解反応の研究を行った.生成物はそれぞれの親分子に対応するオレフィンとハロブタンであった.フッ素を含んだ3つのハロエタンでは,一定の試料圧ではオレフィンの量子収率は転化率の増大と共に減少し,ハロブタンのそれは逆に増加した.又,一定の転化率下ではオレフィンのそれは反応試料圧の増大と共に減少し一定値に収束していった.NOを添加するとハロブタンの生成は完全に阻害されるがオレフィンの量子収率は高転化率下では逆に増加するという効果がみられた.CH_2ClCH_2Clについては,オレフィンの量子収率は転化率や試料圧によらず一定という一見,前3例と異なる結果が得られた.これ等の観測事実は光分解初期過程で親分子から二個の塩索原子が放出されるとすると非常によく説明する事ができる.生成した塩素原子は親分子から水素原子を引抜いて塩酸とエチル型ラジカルを与えるか,あるいは生成物オレフィンに付加して化学活性化されたエチル型ラジカルを与える.オレフィンの量子収率の転化率への依存性は,この二つの過程の反応速度定数比で決定される.フッ素を含んだハロエタンの場合,オレフィンヘの付加が相対的に重要となり,CH_2ClCH_2Clの場合は付加反応の相対的重要性かきわめて低い事から上に述べたみかけ上の相違が生ずるのであり,対象としたすべてのハロエタンに対て,2個の塩素原子の生成を中心とした一般的な反応機構が成立する事が明らかとなった.化学活性化したエテル型ラジカルの塩素原子放出反応(付加反応の逆過程)の速度定数は量子収率の圧力依存性から実験的に得られた(k_d ≈ 1×10^8_<S-1>).この速度定数のRRKM理論計算は提案された反応機構を支持する.最後に,光反応初期過の分解モードと分子構造との関連を議論する.
- 宇宙航空研究開発機構の論文