<論文>親子の間の共感関係と母親の機能についての一考察 : 作文「テレビとおつかい」を手がかりに
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概要
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「テレビとおつかい」という作文をとりあげて「親子の共感関係の問題点」を考察したテキストをもとに,作文中の親子関係のもつ意味について再度考察した。論点は,テレビに夢中でおつかいに行かなかった子どもに対して,母親がかわりに行ったこと,及びそのことで父親にしかられた子どもの気持ちをわかってやるといった態度をとったことの二点である。おつかいに行かなかった子どもに対して気持ちをわかってあげるというのは共感的態度であると言え,それは内面の葛藤そのものを受け容れるということである。しかし,その行動化を認めるということは共感には含まれないと考えられる。また,そのことはややもすれば子どもを甘やかし,スポイルすることになる。作文の例ではそのような危険性はみとめられないが,これに関しては,「共感」以外の観点が必要であると考えられる。そこでのキーとなるのは,母親のもつ「観念」というものであった。ある意味で子供と同じ平面にいる父親をもつつんだ,大きな存在である日本の母親が,文化としてもつ基本的な観念は「苦労する母」である。そこから様々な観念が派生してくるが,その一つに「罪の意識としての母」がある。そのような「母」を体験することは,個人に道徳的な逸脱を反省させ,規範に従わせる原動力となる。作文中の母親の行動もそうした意味をもつものであったと考えられる。
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