<原著>子宮内膜症発症に関わる遺伝子多型の解析
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概要
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目的:子宮内膜症の発症は多数の疾患関連遺伝子および環境要因との相互作用によって引き起こされると想定されている.今回われわれは,順天堂大学産婦人科にて治療・臨床経過を追跡している内膜症患者を病型分類し,estrogen receptor α(ESRα)・ESRβ,解毒系酵素群に属するglutathione S-transferase M1およびT1(GSTM1・GSTT1)の遺伝子多型解析を行い,疾患との相関解析を行った.方法:有疾患者は以下の3群に分類した.深部ダグラス窩病変を有さない軽度〜中程度内膜症患者を術後再発を呈した群(RE=40人)と術後1000日間,定期的外来診察を受け再発を呈さなかった群(NR=42人)に二分した.さらに子宮内膜症の中でも極めて治療抵抗性をもち重症な深部ダグラス窩病変を有する患者を再発の有無にかかわらずDP群(DP=58人)に分類し,DNAを解析材料とした.健常者群(CL=90人)を対照とした.ESRαの多型にはmicrosatellite markerであるER-TA repeat,ESRβ遺伝子はD14S1026 (CA repeat)についてGenetic Analyzerを用いて解析した.さらにESRα Pvu II single nucleotide polymorphism (SNP)の検索をPCR-制限酵素法にて行った.GSTM1およびGSTT1遺伝子欠失であるnull genotypeをPCRにて検出し,その頻度を比較した.結果:ER-TA alleleでは,これまでの欧米での報告とは異なり,DP群でのみ,22 repeatのallele頻度が有意に対照群に比し高かった.しかし,他の疾患群では有意差は認められなかった.Alleleの大きさにより3群に分けると,NRでのみ双方小さいalleleの組み合わせであるgenotypeが有意に高頻度であった.ESRα Pvu II SNPに関してはこれまでの報告と異なり,DPでのみPvu II site陰性の頻度が高かった.ESRβに関しては特定のalleleと疾患との相関は認めなかった.GSTM1 null genotypeはNRにのみ,GSTT1 null genotypeはNRおよびDPに頻度が有意に高かった.GSTM1とGSTT1の共にnull genotype (double null type)が有疾患群において対照群と比し有意に高頻度に認められた.結語:多因子疾患である内膜症と遺伝子多型との相関解析を行った.ESRα多型allele,さらにGSTM1およびGSTT1 null genotypeが疾患群の一部で有意に高頻度で認められた.しかし,再発・非再発・深部病変群間で頻度に違いが認められた事より,多型性はこれまでに知られているより複雑に病型に影響し,また,人種や地域により因子関与の度合いが異なる可能性も想定された.また,ESRβ多型に関しては特定のESRβ alleleとの相関は認められず,内膜症にはESRβの関与はESRαに比べ大きな影響はないものと考えた.
- 順天堂大学の論文
- 2003-05-30