<特集>急性冠症候群の診断と治療(<特集>虚血性心疾患の予防と治療)
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概要
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急性冠症候群はアテローマプラークに破綻あるいはびらんが発生し,引き続く血栓形成によって発症すると考えられている.破綻を起こしやすいプラークは不安定プラークと呼ばれ,その狭窄度は必ずしも高度ではなく75%未満の狭窄が7〜8割を占める.不安定プラークはその辺縁に活発に活動するT-リンパ球やマクロファージそして平滑筋細胞を持ち,それらから発現する蛋白融解酵素やサイトカイン,増殖因子がプラークの不安定化を修飾する.急性冠症候群の予防,最近ではその急性期においても,これらのいわゆる炎症性反応を抑えてゆくことが重要と考えられるようになってきた.急性冠症候群の中には典型的なST上昇型の急性心筋梗塞のほかにST上昇のない心筋梗塞(non-ST上昇型心筋梗塞)あるいはQ波のない心筋梗塞(非Q波型梗塞),不安定狭心症や冠動脈疾患を原因とした突然死が含まれる.その診断においては臨床症状と心電図がもっとも重要であるが,最近では新しい血清マーカーとして,トロポニンTや脂肪酸結合蛋白などが補助診断として有用である.これらを用いながら,来院から診断そして治療までのプロセスをいかに短時間に能率的に行うかが重要である.治療には内科治療だけでよい場合から,カテーテル治療,そして緊急に冠動脈バイパス術を必要とする症例まで様々である.その中で個々の重症度を速やかに評価し,刻々と変化する病態を捉えながら,時期を逃さず治療を選択し実行して行く必要がある.大まかな治療の流れとしては,初期治療に平行してリスクの評価を行い,血行再建術の適応と時期を判断する.急性期の内科治療,カテーテル治療あるいは冠動脈バイパス術に引き続き二次予防のプログラムを導入する.治療内容としては一般療法(鎮痛と安静),虚血の軽減(硝酸剤・β遮断剤あるいはCa拮抗薬)と責任病変の血行再建(カテーテル治療と冠動脈バイパス術・その補助療法としての抗凝固剤・抗血小板剤),再発予防と心機能不全の改善維持(心臓リハビリテーション・冠危険因子の改善・抗血小板剤・高脂血症治療剤・β遮断剤・ACE阻害薬)を用いる.二次予防には,A:aspirin and anticoagulants, B:blood pressure and beta blocker, C:cholesterol and cigarettes ,D:Diet and diabetes, E:exercise and educationの原則で多面的なアプローチが必要である.この報告では,最近の急性冠症候群の概念・診断・治療のプロセスを概説する.
- 2003-03-28
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