札幌に於ける緬羊リステリア症流行例に關する細菌學的研究
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概要
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本邦に於ては1950年(昭和25年)田島により初めてリステリア症の存在が指摘されて以來, 漸く本症に對する關心が拂われ, 最近各地に於て散發的な若干の發生報告がなされつつある現状である。著者等は1952年(昭和27年)5月札幌近郊の1牧場の羊群に著明な腦炎様症状を呈し急激に死の轉歸をとる流行病の發生に遭遇し, 細菌學的檢索の結果, 本症は緬羊のリステリア症であることを確認した。本例は短期間に於ける相當數の集團發生例であり, 文献上甚だ稀有のものと考えられるので, ここにその發生の概要を報告するとともに, 細菌學的血清學的檢索並びに2,3の地域及び數種動物由來のL. monocytogenesの生化學的・血清學的諸性状に就き若干の檢討を行つた。これらの成績を要約すれば, 次の如くである。(1) 5月16日より6月5日に至る約20日間に589頭中21頭が罹患し, 何れも2∿5日の經過で斃死した。主な症状は呆然佇立, 食慾の癈絶, 沈鬱, 体温上昇, 耳及び下唇の麻痺, 旋回, 倦怠, 起立不能等である。一般に環境衞生の不良な羊舍に多發する傾向が認められた(表1,圖1)。(2) 8例に就き細菌學的檢索を行つたところ, 全例から主に延髄・腦橋・小腦等に限局して原因菌が證明されたが, 鼻汁・眼膩・臟器・淋巴節等からの檢出は不成功に了つた(1例のみ肝から檢出)。これらは何れもグラム陽性の短桿菌で從來の記載のL. monocytogenesに完全に一致した(表2)。(3)國内系及び米國系の菌株17株を用い, 本菌屬の血清學的・生化學的性状の比較檢討を行つた結果, 凝集反應(O及びH)によりA, B, C, の3群に型別することが出來た。然し分離場所及び分離動物種との間に特別の關係を認め得なかつた。又血清學的菌型とは無關係に生化學的性状に於ては何れもほぼ同一の態度を示すが, sucrose及びsorbitolの分解態度に若干の差異を認めた(表3,6,7)。(4)本症の場合不顯性感染が存在するや否やを血清學的に檢討してみた。即ち流行終熄後2回に亘り同一個体につき凝集價をしらべた結果, 個体により凝集價の上昇するものは或いは下降するものを認め得たが, 確實に不顯性感染の事實を裏書するが如き成績を得ることは出來なかつた(表4,5)。(5)本症の自然感染經路追及の目的で, 山羊及び羊に對する微量菌の經口並びに經鼻感染試驗を實施したが, 經口投與後1時的に体温上昇と菌血症を呈した山羊1例(死後の菌檢索及び病理組織學的檢索は陰性)以外は特記すべき所見が得られなかつた。
- 北海道大学の論文
著者
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平戸 勝七
北大
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清水 亀平次
帯広畜産大家畜微生物学教室
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清水 龜平次
北海道大學獸醫學部家畜衞生學教室
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平戸 勝七
北海道大學家畜衞生學教室
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小野 悌二
北海道大學家畜衞生學教室
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佐藤 儀平
北海道大學家畜衞生學教室
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八幡 林芳
北海道農業試驗場畜産部
-
西原 雄二
北海道農業試驗場畜産部
-
小野 悌二
北海道大學獸醫學部家畜衞生學教室
-
佐藤 儀平
北海道大學獸醫學部家畜衞生學教室
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