好熱性好酸性細菌の検索,単離および諸性質の検討
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概要
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我々、人間を含め生物が最も広く、かつ最も多く分布している所は、中性付近のpH,20℃~37℃の温度、1気圧、そして適当な栄養素と塩分を含んでいる場所である。その一方、地球上には我々の目から見て生命の存在が許されないような環境、すなわち極限(特殊)環境が多数ある。高温地帯、高塩濃度の塩湖、強酸あるいは強アルカリ性の場所、そして光も届かない海底等がそれに該当する。近年では、生物によって非常に過酷と思われる極限環境に好んで棲息する微生物が数多く単離されている。これらの微生物群は極限環境微生物と総称されている。極限環境微生物は、自分のおかれた環境に適応するために種々の特殊な能力を獲得してきた。特殊な能力ゆえに、最近では利用の幅も広がってきている。1970年代以降、好アルカリ性細菌由来のプロテアーゼ及びセルラーゼが衣料用洗剤に配合されるようになった。海底から石油分解細菌が単離されており、応用研究に期待がもたれている。人間が発見してきた極限環境微生物はほんの氷山の一角にしか過ぎず、今後、人類にとってさらに有益な微生物が単離されるかもしれない。以上のようなことから、この分野の研究は大きな可能性を秘めたものであると思われる。我々の研究室では、極限環境微生物の中でも特に好酸性細菌に焦点を当てて研究を行ってきた。Acidiphilium属細菌は、1981年にアメリカのハリソンにより初めて単離された一群の好酸性従属栄養細菌(1属6種)である1)。我々は、これまでにAcidiphilium属細菌より、各種制限酵素2)~7)、グリセロール3-リン酸デヒドゲナーゼ8)などの有用酵素の検索、単離、精製を行ってきた。また、同じく好酸性の従属栄養細菌である。Acidobacterium属細菌より、β-グルコシダーゼなどの糖質関連酵素の精製も行ってきた9)。それらと並行してAcidiphilium属細菌の分子育種の系の確立を目指して、宿主ベクター系の開発も進めてきた10),11)。一方、高温環境の好んで棲息する好熱性細菌はタンパク質の大部分が変性する60℃以上の世界でも生育できることから、産生する酵素の耐熱性について詳細に研究されてきた。その結果、高熱性細菌の酵素より得られた知見を基に、部位特異的変異の手法を用いて常温菌の酵素の熱安定性を人為的に向上できるまでに至った。その他にも、好熱性細菌の研究は遺伝子工学や進化生物の発展上、大きな役割を担ってきた。高度好熱性細菌Thermusaquaticus由来のDNAポリメラーゼが12)、PCR技術の発達に寄与し、分子生物学分野のみならず犯罪捜査の際のDNA鑑定等に応用されているのは、その代表例の一例である。これらのことから好熱性と好酸性の両方性質を併せ持つ好熱性好酸性細菌に注目し検索、単離及び諸性質の検討を試みた。全国各地の泉質が酸性である温泉でサンプルを採取して、それから53株の好熱性好酸性細菌を単離することがでた。以下に単離菌株の諸性質に関する研究を報告する。We have isolated 53 thermophilic and acidophilic bacteria from about 150 samples from acidic hot springs. All the strains isolated exhibited growth only at high temperatures and low pH ranges. We extensively characterized the strain UZ-1 which was isolated from Unzen spa. This strain was found to be a gram-negative, aerobic and heterotrophic bacterium. The DNA base composition was 63 mol% GC. Growth occurs over a range of 37℃ to 65℃ with an optimum temperature of 60℃, and between pH 2.0 and pH 6.0 with an optimum pH of 3.0. On the other hand, the optimum temperature of the other 6 isolated strains was 70℃. We report, in this paper, the characteristics of the isolated strains.
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