<総説>プロトペクチナーゼに関する研究 : ペクチン分解酵素の研究の新展開 : 微生物の新機能の開発とそのバイオインダストリーへの利用
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概要
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バイオインダストリーを設立する手法は様々であるが,自然界における特異的な現象に注目し,その現象をバイオインダストリーに結びつける場合がある。微生物学の研究者は,自然界における特異的な現象を微生物界に検索し,その特異現象の研究で得た知見を応用してバイオインダストリーに結びつけることを試みる場合がしばしばある。この研究は,農業・農産廃棄物を有効に利用することの経済的な重要性に触発されて開始したものであるが,坂井らは植物組織中のペクチン質の分解機構に注目した。ペクチン物質は非木質植物組織の細胞壁中に最も多く存在する物質で,植物組織中では不溶性のプロトペクチンとして存在し,野菜や果物の食感に大きな影響を与える物質であることが知られている。さて,果物や野菜類が熟化する過程での最も大きな変化は軟化することにあるが,その際プロトペクチンが分解する。プロトペクチンを分解する酵素としてプロトペクチナーゼと名付けられた酵素の存在が推測されていた。永い間,プロトペクチナーゼは植物組織を崩壊させる酵素として認識され,プロトペクチンから高分子のペクチンを可溶化する機能については全く顧みられなかった。坂井らは,プロトペクチンを分解する酵素をプロトペクチンから高分子のペクチンを遊離させる機能を持つ酵素として微生物に見出し,この新規機能をバイオインダストリーに結びつけることを試みた。この総説では,それらの研究の概略を紹介する。
- 近畿大学の論文
- 1999-03-31
著者
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