<総合論文>ナトリウムの有用性に関する比較植物栄養学的研究
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概要
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ナトリウムは植物の必須元素にはなっていない。しかし, 植物の中にはナトリウムを吸収することによって生育のよくなるものがあり, その効果はカリウムの供給が十分でないときに現れやすいことも知られている。本研究は, ナトリウムの施用効果がどのような作物に認められ, それがどのような栄養特性と関係があるのかを明らかにするために行った。供試した作物はアカザ科(Chenopodiaceae)3種(フダンソウ, オカヒジキ, ホウレンソウ), スベリヒユ科(Portulacaceae)1種(マツバボタン), アブラナ科(Brassicaceae)6種(ハクサイ, チンゲンサイ, カブ, ノザワナ, コマツナ, キャベツ), イネ科(Gramineae)4種(オオムギ, イネ, コムギ, トウモロコシ), キク科(Asteraceae)2種(キクナ, レタス), ナス科(Solanaceae)1種(トマト), ヒユ科(Amaranthaceae)1種(ヒユナ), バラ科(Rosaceae)1種(イチゴ), マメ科(Leguminoseae)1種(インゲン)の9科20種であった。これらの中でナトリウムのカリウム代替率が50%以上の作物は13種で, アカザ科, スベリヒユ科, アブラナ科の全ての種と, イネ科のオオムギとイネ, キク科のキクナがこれに含まれていた。アカザ科, スベリヒユ科には耐塩性の強いものが多いが, それがナトリウムの要求性に反映しているようである。アブラナ科も供試した6種類の作物すべてがナトリウムに反応したが, これはアブラナ科のもつ特性かもしれない。これに対してイネ科とキク科では種によって大きな違いがみられた。両者とも多数の種を含む大きな科であり, その中にはテンツキ(Fimbristylis diphylla, イネ科), ウラギク(Aster tripolium, キク科)などの塩生植物が存在していることが知られている。本研究の結果からも, 両科ではナトリウムに対する生理的反応に科内分化がおこっているように思われる。ナトリウムによる生育促進効果と地上部のナトリウム含有量との間には比例関係が認められ, また生育量の増加には含水量の増加が伴った。これらのことからナトリウムは, 作物体内でカリウムの代わりに浸透圧を作出することによって, 作物の保水力, 吸水力に寄与し, 生育に貢献していると推察された。さらに根部から地上部へのナトリウムの移行性に大きな種間差異が認められ, これがナトリウムの施用効果の種間差異の主要な原因になっていることが明らかになった。
- 1998-03-31
著者
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