<原著>アトピー性皮膚炎患者皮膚におけるビクニンの存在部位とその変化について
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概要
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アトピー性皮膚炎患者皮膚の炎症局所にはマスト細胞が増加していることがすでに明らかとなっており, このマスト細胞は高親和性IgEレセプター(FcεRI)やケミカルメディエーターなどを通じ, 局所皮膚における炎症継続に何らかの役割を果たしていると考えられている.われわれはマスト細胞の有するプロテアーゼの内の一つである肥満細胞トリプターゼ(トリプターゼM)のインヒビターであるビクニンに対する特異抗体を用いてアトピー性皮膚炎局所でのビクニンの動態を検討した.抗ビクニン抗体と抗トリプターゼM抗体の二重染色の結果ビクニン陽性細胞はマスト細胞であることが明らかとなった.次に, アトピー性皮膚炎皮疹部(苔癬化局面)6例, 小児乾燥型皮疹部皮膚7例, 同無疹部皮膚5例, 対照正常皮膚5例でのビクニン陽性マスト細胞数(cells/3.6mm×5.1mm)を比較検討した.苔癬化局面では110.1±38.2,小児乾燥型皮疹部皮膚では186.03±33.37,同無疹部皮膚では78.42±47.65,対照正常人皮膚では31.6±11.83であり, 皮膚炎局所では統計学的に有意にビクニン陽性マスト細胞数が増加していた.又, 真皮結合織中, 或いは反応陽性細胞内に, 抗ビクニン抗体と反応せず抗トリプターゼM抗体とのみ反応するマスト細胞或いは顆粒が認められた.更に末梢血中のビクニンの前駆体であるpre-α-inhibitorの量をImmunoblot法により測定したところ, アトピー性皮膚炎患者血清中には正常人の約2倍の量が含まれていた.従って, ビクニンはアトピー性皮膚炎皮膚局所で脱顆粒に際してマスト細胞より真皮中に放出され, 又は血液中から漏出して, 炎症に何らかの関与をしていると考えられた.
- 2000-06-25
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